ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 75
「やっぱ凄えな、お前の姉ちゃん」
サウが感心したように、トランスロットの肩を叩く。
「う、うん」
トランスロットは目の前でミケラが泣き始めたのに、何も出来なかった自分が嫌になっていた。
「うん?どうした?」
トランスロットの様子が変だったので、サウが顔を覗き込んでくる。
「妹が泣いてるのに、何も出来なかったから」
振り絞るようの声で答えた。
それを聞いてサウは、
「ガハハハ」
と笑う。
「子供はそれでいいんだよ、その為に大人がいるんだ。お前の姉ちゃんが、ちゃんとやってくれただろう?」
「う、うん」
力なく返事をするトランスロット。
「いいか、お前はまだ子供だ、だからこれから出来ることを一つずつ増やしていけばいいんだぞ。大人だってなんでも出来るわけじゃないぞ、その時は誰かを頼る。子供のお前は、出来ないことは大人を頼っていいんだ」
「そうなの?」
サウの言葉を半信半疑で聞いたトランスロッタは、首を捻る。
「いきなりは難しいか・・・取り敢えず仕事するか、馬を入れるぞ」
トランスロットとゆいは、先ほどと同じく空いている柵の中に避難する。
柵の中からサウが馬を一頭ずつ柵に入れるのを見ていた。
「よし終わった、じゃあ飼い葉を作るぞ」
全ての馬を柵に戻したサウの後にトランスロット達は続く。
昨日と同じように飼い葉を作ると、馬に食べさせる。
「今日はこれでいいからお前達は家に帰れ、妹のことが気になるだろう?」
「うん、ありがとう」
トランスロットはゆいの手を引いて、急いで家に帰った。
家に戻ると、家の外に白妙と黒妙と見慣れない男達が話していた。
「トランスロット、お帰りなさい」
「お帰り」
白妙と黒妙が手を振って迎えてくれる。
「ミケラは?」
「家の中よ・・・」
白妙は最後の方を口を濁す。
トランスロットは急いで家の中に入る。
食堂にはタマンサとタマンサにしがみつくミケラ、ミケラの手を握っているサクラーノ。
サクラーノの両肩に手を置くマオ。
タマンサの両脇にタマーリンとモモエルがいて、ロレッタはお茶の準備をしていた。
「どうしたもんかね」
タマンサの向かいに座っていたお妃様が口を開く。
「もう、お城には行かない」
ミケラはタマンサにしがみつたまま、それだけ言うとタマンサの身体に顔を埋める。
「もう無理よ、ミケラにこれ以上無理はさせられないわ」
自分にしがみつくミケラの頭を撫でながら、タマンサはお妃様きっぱりと言う。
「そうだね、今は無理させてもダメだよね・・・判った、しばらく様子を見ようじゃないか」
お妃様も決心したようだ。
後書きです
どうしてこうなった!
この展開は、自分でもびっくり。
別の話を用意していたのに、突然ミケラが頭の中で「お家に帰る」と暴れだして・・・
取り合えず、ミケラはお家に帰ることになりました。
これで、謎の聖女の出番が増えてしまうかも。
年一回の単発の予定でいたのに・・・季節ものにするか。
また来週(@^^)/~~~
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