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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 74

「う”~~っ、こうなるから困るのよね」

 ロレッタは心の中で溜め息をつくと。

「ほらミケラ、服が汚れるでしょ」

 ミケラは抱き起こそうとしたが、

「いやだ、いやだ、いやだ」

 いつも以上に聞き分けがない。



「ミケラ、お姉ちゃんを困らせないで」

 なんとかミケラを抱き上げて立ち上がらせる。

 ミケラはしばらく黙ってうつむいていたが、

「・・・お家に帰る」

 唐突に、目に涙を一杯浮かべて訴えてきた。



「今日は無理だから明日・・・無理か・・・明後日、明後日にお家に帰ろう」

 ロレッタはなんとか、ミケラをなだめようとした。

「いや、いや、いや、もうお城はいや!」

 ミケラが悲痛な叫びを上げ、

「お家に帰る、お家に帰る、お家に帰る」

 とロレッタをぽかぽか殴る。

「痛い、痛いよミケラ・・・明後日、明後日ならお家に帰れるから」

 その返事を聞いてミケラは、

「うわぁぁぁぁぁん」

 声を上げて泣き始めた。



 ロレッタは直ぐさまミケラを抱き締める。

「エッグ、エッグ・・・お城はいや・・・エッグ」

 ロレッタの胸に顔を埋め、しゃくり上げながら訴えるミケラ。

「もう、この子限界だわ。これ以上無理させられない」

 ミケラを抱き締める腕に力が入る。

「うん、お家帰ろう」

 ミケラの背中を優しく撫でる。

「ホント・・・ホントにお家に帰っていい?」

 目を真っ赤に腫らしてミケラが顔を上げる。

「うん、お家に帰って一杯、母さんに頭撫でて貰おう」

「うん」

 ようやくミケラは泣き止む。



「お家帰る前に、お顔を拭きましょうね」

 ポケットからハンカチを出すと、ミケラの顔を綺麗に拭く。

「はい、綺麗になった」

 ハンカチをポケットにしまってから、ロレッタは白妙と黒妙の方に向くと、

「もうミケラは限界だから、家に連れて帰る。そう伝えて」

 それだけ言うと、白妙と黒妙の返事も聞かないでミケラの手を繫いで厩を出て行ってしまう。



「姉ちゃん、どうする?」

 ロレッタ達を見送りながら、黒妙は姉に聞く。

「どうするって、見たままを伝えるしかないじゃない」

 白妙は憮然とした表情で答えた。

「姉ちゃん、怒ってる?」

「あんたはどうなのよ?」

 黒妙はしばらく黙った後に、

「ミケラ様が可愛そうだと思う」

 白妙は黙って聞いていたが、握る拳がブルブル震えていた。


「いくよ」

「うん」

 白妙と黒妙も厩を後にして、サビエラは事の展開にオロオロするしか出来なかった。

「どうしよう、どうしよう・・・そうだ、モモエル様、モモエル様に知らせないと」

 サビエラも魔道研に戻るために、厩を去って行く。


                        (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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