ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 73
「それで、ゆいが渡したいモノって?」
気になったので、ロレッタに聞いてみる。
「うふふふ、それは内緒。貰ってみてのお楽しみと言うことで」
ロレッタ悪戯っぽく笑う。
その表情を見て、
「あなたも普通の女の子なのね」
とサビエラはつい口に出してしまう。
「へっ?」
意味が判らずロレッタは変な声を出してしまった。
「それって、どう言う意味?」
「あっ、ごめんなさい」
サビエラは咄嗟に自分の口に手を当てる。
「深い意味はないの・・・ミケラ様のことがなければ、普通に街で暮らしていたんだろうなと思って」
その言葉に、ロレッタは成る程という表情をして、
「仕方ないわよ、妹が困っていたら助けるのがお姉ちゃんだから」
ニコッと笑う。
その笑顔を見て、
「うふふふ、ミケラ様が羨ましい」
ロレッタの返事に、サビエラが微笑む。
「どうして?」
「だって、こんなに自分のこと思ってくれるお姉ちゃんがいるんですもの」
サビエラの言葉に、ロレッタは照れ笑いをして返した。
「ただいま」
ロレッタの姿を見て、
「お姉ちゃん、お帰り」
ミケラがトコトコと走ってきた。
それからサビエラが居るのに気がついて、
「あっ・・・」
と口を手で塞いで、
「ろ、ロレッタ、よく・・・なんだっけ?」
言い直そうとして失敗する。
「ミケラ、無理しなくていいから・・・サビエラは告げ口しないから」
ロレッタにウィンクされて、
「誰にも言いませんから、普通に過ごして下さい」
サビエラはミケラに微笑みかける。
「よかった」
それを聞いてミケラは満面の笑顔になる。
お城の敷地内では、ロレッタのことを「お姉ちゃん」と呼ぶのは禁止されている。
ロレッタもミケラと呼び捨てするのは禁止されていて、名前の後に様を付けるか、姫様と呼ぶように言われていた。
それも建前だけになっているのだが、あまり大ぴらにやるのも怒られるのだ。
ミケラが王宮に戻ったばかりの頃は、侍女長が厳しかったが、ミケラが倒れてからはミケラの自由にさせようと言うことで話がまとまっていた。
なので、ミケラがお城から抜け出すのも、温かく見守ってくれているのだ。
「まだ、羽があるけど・・・」
ゆいがおずおずと聞いてきた。
「お姉ちゃんの分?」
ミケラがロレッタの顔を見上げた。
「わたしは・・・もう、ゆいに貰ったから・・・」
気まずそうに返事をするロレッタ。
「え~~~っ!」
大きな声を出すミケラ。
「ずるい、ずるい。お姉ちゃんばかり先に貰ってずるい」
地面に転がって、手足をバタバタさせるミケラ。
(Copyright2025-© 入沙界南兎)