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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 64

 午前中一杯かけて、柵の中の掃除を終わらせる。

 汚れた麦穂を捨てて、新しいモノに変えた。

 汚れの酷い部分は、水で洗い流して、更にその水を綺麗に拭き取ったりとかなり太変な作業で、トランスロットやゆいは何度もへたばったりしたが。

「流石に人手あると早いな。一人だともっと時間がかかる」

 トランスロットとゆいが戦力になったかは、はなはだ疑問だが、サウの満足そうな顔を見ると、トランスロットもゆいも何も言えなかった。

「丁度お昼だ、飯にしよう。お前達はまた家で食べるのか?」

 トランスロットは首を横に振った。

「今日はお弁当を作って貰いました」

 トランスロットとゆいが、うまやに働きに行くと聞いたロレッタが、作って持たせてくれたのだ。



「弁当か、いいな」

 弁当と聞いて羨ましそうな顔をするサウ。

「姉さんが作ってくれたんだ」

 ちょっと誇らしげに言うトランスロット。



「どんな弁当だ」

 聞かれて、トランスロットは荷物置きに置いた手提げ袋から弁当を持ってきて見せた。

 それは、お昼用に作ったおかずを、傷まないように少し味付けを濃くしたおかずを白パンに挟んだだけの、簡単なサンドイッチだった。

「割りと普通だな?」

 白パンのサンドイッチは、一般家庭で作られている標準的弁当なのだ。

「朝、姉さん忙しいから」

 家族の朝食と昼食を作り、尚且つ、お城に働きに出ているのだから、急な弁当にまできちんと作る余裕はないのは当然だろう。

 タマンサがまともな料理を作れれば、こんな苦労をする事もないのだが。

「母さんには絶対、包丁は持たせない」

 とロレッタが断固拒否しているのだから、仕方ない。



「そうか・・・」

 サウは鼻をヒクヒクさせて、

「なんか、いい匂いがするな。一口いいか?」

 突然言われて、

「え~~っ」

 と言うトランスロットに、

「一口、本当に一口」

 にこやかに笑うサウ。

「じゃ、一口だけなら」

「おおっ、ありがと」

 

 サウは腰のポーチからナイフを取り出すと、布で丁寧に拭いてから皿を出し、

「この皿の上に置いてくれ」

 トランスロットの前に置き、トランスロットは皿の上にサンドイッチを置く。

 サウは、サンドイッチの端から一口分くらいの大きさを、ナイフで切り分けた。

 ナイフの切れ味の良さに、

「凄い、スパッと切れた」

 と驚きの声を上げた。



「刃物は切れないと危ないから、いつも手入れしてるのさ」

 ちょっと自慢げに言う。

「そうなの?」

「切れないと余分な力を入れないと切れないから、力を入れすぎて、変なところを切ったりして危ないんだぞ」

 トランスロットはサウの話を目をキラキラさせて聞いていた。

 この世界ではナイフの使い方は父親から教わるモノなのだが、幼くして父親は砦で魔獣の襲撃に巻き込まれて亡くなり、その後直ぐにサクラーノが生まれ、ミケラがやって来てと家中てんてこ舞いになり、誰もトランスロットにナイフの使い方なんて教えてくれなかったのだ。

 それに、現在七人家族なのだが、家族の中で男はトランスロット一人きりなので、サウに憧れみたいなもんを抱いていたのかもしれない。


                       (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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