表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
474/592

ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 62

「声を聞けば判るわ。ゆい、わたしの真似して声を出してみて」

「う、うん」

 タマンサが立ち上がると、

「あ~~~~~~~~~」

 声を出した。

「あ”~~~~~~~~」

 その後に続いて声を出すゆい。

 音程はブレブレだったが、澄んだきれいな声が辺りを包む。



「たしかに、声は本当に綺麗な」

「でしょ、でしょ」

 再び興奮するタマンサ。

「母さんが興奮するのも判るけど、ゆいは本当に歌を覚えたい?」

 ゆいにロレッタは聞く。

「うん、歌が上手になってナナ様に誉めて貰いたい・・・」

 ゆいの基準はあくまでもネビュラ・ナナだった。

 ただ、ゆいがチラッとトランスロットの方を見たのを、ロレッタアイは見逃しはしない。

「ふふっん、ゆいが歌を覚えたいなら、わたしも応援するわ」

 と言いつつ、ロレッタはにまにまする。



「でも、練習は明日からね」

「そうね、こう言う事はサクラーノうるさいから」

 サクラーノが寝てしまってから歌の練習をしたのがばれると、サクラーノが怒って面倒な事になる。

「だから、歌の練習は明日にしましょう」

 少し戸惑いながら、ゆいはトランスロットの方を見た。

「明日も、厩行くから、もう寝よう」

 トランスロットにそう言われ、ゆいは頷く。



 ロレッタは、朝食の仕度とお昼の仕込みをしてから、お城に出かけるので朝が早い。

「ロレッタも朝が早いし、洗い物はわたしがしておくから、もう寝なさい」

 生活は、ロレッタに合わせて動いていたのだった。

「じゃあ、お願いね」

 ロレッタは桶にお湯を溜めると、その桶を持ってお風呂場に向かう。

 ケットシーは猫の妖精である、そして猫はきれい好き。

 身体の手入れをしないで、寝る事は出来ないのだ。



 次の日、ロレッタと一緒にトランスロット達も出かける。

「じゃ、わたしこっちだから」

 お城の門の前でロレッタと別れ、通用門から厩に向かう。

「おはようございます」

 サウに挨拶する。

「おっ、今日も早いな」

 トランスロットとゆいに、にこやかに挨拶するサウ。

「姉さんがミケラの所に行くから、一緒に来た」

 トランスロットがミケラの兄というのは、街の人間なら誰でも知っている事だ。

 ミケラがお城に連れ戻された時の事も、その為にロレッタがミケラ付きの侍女になった事も。



「お前の所も色々大変だな」

 笑いながらサウは、トランスロットの肩を叩く。

「う、うん・・・でも楽しいよ」

 はにかみながら笑う。



 ミケラが突然やって来て、両親と姉が振り回されて、幼いながらに焼き餅を焼いた事もある。

 それで年月が経つと、ミケラは大事な妹になった。

 その妹が突然、お城に連れ戻されて酷く寂しかった。

 姉がお城に働き行き、タマンサが病に倒れて大変だったけど、色々な人が助けにやって来てくれた。

 ミケラも時々帰ってくるようになったし、マオが家族の一員になり、ゆいもやって来た。

 前より賑やかになったのだ。


                        (Copyright2025-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ