表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
462/610

ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 50

「大きいね」

 感動とも驚きとも付かない表情で見上げるゆいを、サウは微笑ましく見ていた。

 ゆいの頭が馬の胴の半ばくらいの高さなので、近くで見るとかなり首を上に向けなければならない。

 その様子が可愛く見えたからだ。

「そうだ、ちょっと待ってな」

 サウは慌ただしく厩を出て行き、しばらくして厩の入り口まで戻ってきた。



「準備出来たから、こっちへおいで」

 ゆいとトランスロットを呼び寄せる。

 二人が厩の外へ出ると、そこには小さな馬車が置かれていた。

 御者台の他には、席が二つしか無い、本当に小さな馬車だ。

「さっ、乗った乗った」

 言われてトランスロットが先に馬車に乗ると、ゆいを引っ張り上げて席に座る。



「この馬車は?」

 馬車そのものが王都では珍しい。

 王都内に馬は入れない、馬車も入り口の前でなので、街の外へ出る住人以外は目にすることはない。

 因みに入り口から倉庫までの荷物の移動は、力関係のタレントを持つケットシー達が馬の代わりに荷車を運び入れている。

 力持ちのマオとクロも、週に一回程度、荷車を引くのにり出されていたのだった。



「こいつか?こいつは城内の連絡用の馬車だよ」

 城の敷地はかなり広い、端から端までとなると、歩くのは結構大変なのだ。

 特に、離れた場所にある魔道研との連絡に主に使われている。



「それじゃ、行くぞ」

 サウのかけ声と共に、馬車が動き始める。

 最初はゆっくりだったが、次第に早くなる。

「凄い、速い」

 ゆいが驚きの声を上げる。

 ゆいは人間が走るより速く飛べるが、それ以上の速さで馬車は走っていて、そんな速さは初めての経験だった。



「もっと速く走らせられるけどな、ここじゃこれ以上出すと危ないから」

 いくら広いとは言え、城の敷地内でそう無茶も出来ない。

「これでいい、あははははは」

 ゆいが楽しそうに笑う。

 そんなゆいを初めて見て、トランスロットは驚いたが、

「あははははは」

 結局、ゆいと二人で笑ってしまっていた。



「さてと、楽しかったか?」

 馬車を止めてサウが御者台から振り返る。

「うん、とっても」

 満面の笑顔でトランスロットとゆいは返事をした。

「馬って速いんだね」

 人見知りのゆいが、すっかりサウに心を許していた。

「わはははは」

 嬉しそうに笑うサウ。

「もっと速くだって走れるぞ、ここじゃ狭くてスピード出せないから仕方ないけどな」

 もっと速く走れるという言葉に、ゆいの目が輝いた。

「もっと速く走れるの?」

「おおともよ、馬の全力はこんなもんじゃ無いからな」

「走って、走って」

 ゆいがせがむ。


                         (Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ