ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 48
「ミケラ様、お帰りなさい」
お城の門番がミケラとロレッタを迎え入れる。
トランスロットはお城の門から入らずに、お城の城壁沿いに歩き、通用門を目指した。
ミケラと一緒に門から入ってもよかったのだが、通用門からの方が目指す場所が近いからだ。
「よっ、トランスロット。何か用事か?」
通用門を守る兵士が声をかけてきた。
「サウさんに用事があるんだ」
「サウさんにか?」
「うん、馬車の乗り方を教えてくれるって言うから」
馬車と聞いて、兵士が破顔した。
「旅行で、サウさんと仲良くなったのか」
「うん」
「そうか、そうか・・・よし、通れっ」
兵士は通してくれた。
通用門は魔道研の職員もよく通るので、大人は殆どは呼び止められないのだが、流石にトランスロットのような子供は呼び止められる。
「おじさん、おはようございます」
厩まで行くと、サウの姿を見つけ、トランスロットは声をかけた。
「おっ、坊主来たな」
トランスロットの姿を確認して、サウは笑う。
サウはケットシーには珍しく、スラビと言う家名持ちだ。
ケットシーの殆どが、家名とか地位とかには興味は無い。
こだわるのは、一部の貴族くらいだ。
サウの先祖が、魔獣討伐で功績を挙げ、その報奨として屋敷とスラビの家名を貰ったのだが、ケットシーの例に漏れず、サウも家名とかに頓着はない。
貴族街に屋敷を持つ貴族だったが、
「馬が好き」
と言う理由だけで、厩で馬の世話をしているのだ。
「そっちのお嬢ちゃんは?」
トランスロットの後ろに隠れて、チラチラとサウを見ているゆいについて聞かれた。
「昨日から、家で預かっている子なんだけど・・・懐かれちゃって、付いて来ちゃったんだ」
「そうか、坊主はモテモテだな」
わはははと笑うサウ。
「ち、違うよ、そんなんじゃないよ」
慌てるトランスロット。
「照れるな、照れるな」
サウはゆいの方を向くと、手招きする。
ゆいはトランスロットを見上げた。
「大丈夫だよ、サウさんは優しいから」
トランスロットにそう言われ、ゆいは恐る恐るサウに近寄る。
「随分警戒されてるな、俺はそんなに怖いか?」
困った顔をしてトランスロットの方を見る。
「初めて会った人には、みんなそんな感じだから気にしないで」
その一言で納得した。
要人の馬車の御者をすることも多いので、今まで何人かそんな要人を乗せたことを思い出したのだ。
「誰にだって苦手なことの、一つや二つあるもんだ」
サウは自分史上、最高の笑顔をゆいに向けた。
後書きです
ドラクエⅢ、やっとバラモス倒しました。
ローペースです。
最近、ネトフリでスタートレック・エンタープライズばかり見ているのでゲームに割く時間が取れなくて。
小説も書かないとならないし。
以前なら、休みの前の晩から寝ないで朝までゲームだったんですが、それをやるとこれが落ちちゃうから。
最優先はこの話を毎週日曜日に落とさないことになってます。
飽きっぽい私にしてはかなり頑張ってる方です、自分で言うのもなんですが。
また来週(@^^)/~~~
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