ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 47
黒妙はトランスロットの後ろから差し出されている羽を受け取ると、一枚を姉に渡す。
「ありがとう」
白妙は嬉しそうにそれを受け取ると、しばしうっとりと眺めてから懐にしまう。
「ゆい、ありがとうね」
ゆいにお礼を言う。
黒妙も頭を下げた。
「ど、どういたしまして」
少しは馴れてきたのか、返事に怯えた様子が無くなっていた。
「さてと、お茶も飲み終わったみたいだから、お風呂へ入って寝ましょう」
ケットシーのお風呂はお湯に浸からないで、濡れたタオルで身体を拭くだけなので直ぐ終わってしまう。
ロレッタは、ミケラとサクラーノの身体を拭いて寝間着に着替えさせから寝かしつける。 その後、自分の身体を拭いて寝間着に着替えた。
「ゆいはお風呂どうする?」
聞かれてまた、首を傾げる。
「天使は身体を洗ったりしないの?」
聞き直されて、やっと意味が判り頷くゆい。
「か、身体はあまり汚れないので、た、たまに泉で水浴びをするくらいです・・・」
「そうなの、じゃあ今日はもういいわね」
そのまま寝ることになった。
「わたしのベッドを使って」
ロレッタはゆいに自分のベッドを譲り、居間から椅子を持ってきて並べて作ったベッドに寝る。
「じゃあ灯りを消すわよ、おやすみなさい」
ゆいはベッドに横になり、天井を見上げる。
今日は色々なことがあった。
唐突にネビュラ・ナナに地上に行くように言われ、地上に降りるとトランスロットに出会った。
なんだかんだあって、こうしてトランスロットの家にお世話になる事になったのだが、
「最初に会ったのが、トランスロットで良かった」
しみじみ思う。
人見知りの自分が、トランスロット以外に最初に出会っていたら、どうなっていたか判らない。
「ナナ様、どうしてるかな?」
唐突に、自分を送り出したネビュラ・ナナの顔が思い浮んだ。
送り出す時に、
「地上の方達と同じ生活をしなさい」
とアドバイスは貰ったが、
「同じ生活ってどういう事だろう?」
そこまでのアドバイスは貰えなかった。
「わたし、ここでうまくやっていけるのかな」
少し不安になる。
不安を抱えながら、あれこれ考えている内に、ゆいは眠りについていた。
朝になり、朝食を済ませるとトランスロットは、ロレッタとミケラと一緒に出かける。
ゆいもトランスロットについて歩く。
「どこに行くの?」
トランスロットに聞く。
「お城だよ」
「お城?」
ロレッタとミケラはお城に戻るので、一緒に出かけると言うことは、当然、お城に行くことになるのだ。
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