ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 38
「はい、着替え終わり」
ミケラの着替えを先に済ませる。
「行っていい?」
「いいわよ」
返事を貰うと同時にミケラはカーテンから飛び出し、ゆいへと向かって走った。
「お姉ちゃん、天使なの?」
「そうだよ」
ゆいはニコッと笑う。
ミケラもサクラーノも、ネビュラ・ナナから頼まれた子供だ。
「ナナ様から頼まれてるんだから、頑張らなきゃ」
心の中では使命感に燃えていた。
結局、数日後にネビュラ・ナナ自身がやらかして、ミサケーノに”物理的に”こっぴどく叱られることになるのだが。
タマンサも着替えが終わり、それぞれが適当に座る。
ミケラとサクラーノはゆいの両側に座り、タマンサはゆいの正面に、タマンサの両側にトランスロットとモモエルが座る。
「簡単な話はモモエルから聞いたけど、あなたは一人でこの街に来たのね」
頼みの綱のトランスロットが側にいないので、オロオロしながら、
「う・・・う、うん」
と頷くゆい。
本当はトランスロットの隣に座りたかったのだが、その前にミケラとサクラーノに捕まってしまって、トランスロットの隣に座れなかった。
ネビュラ・ナナに頼まれている子供なので、ぞんざいに扱うわけにもいかず押し切られてしまったのだ。
「ナナ様に頼まれてるんだから、頑張れわたし」
心の中で自分を鼓舞し、なんとか頑張っているが挙動がドンドン怪しくなる。
「大丈夫、あなた?」
視線がおろおろし脂汗を流すゆいを、タマンサが心配になって聞いたが、
「だ、だい・・・大丈夫・・・です」
冷や汗をだらだら流しながらなんとか返事を返した。
「大丈夫そうに見えないわよ」
タマンサは余計に心配になる。
「トランスロット」
モモエルが声をかけた。
「うん」
トランスロットが立ち上がると、ゆいの近くまで歩く。
ゆいは立ち上がると、さっとトランスロットの後ろに隠れた。
「あらあら」
ゆいの行動に驚くタマンサ。
「あの子はトランスロットに懐いているようです」
それを聞いた瞬間、タマンサの目がピキ~ンと光った。
「なら、うちに来なさい。その方があなたも安心でしょ?」
身を乗り出して迫るタマンサに、ビビリまくるゆい。
「母さん、ゆいが怯えるからやめてよ」
トランスロットがゆいを庇う。
「お姉ちゃん、お家に来るの?」
ミケラが見上げて聞く。
「・・・」
返事に困って、ゆいはトランスロットとモモエルの方を交互に見る。
モモエルも困ってタマンサの方を見た。
「うちに来なさい、トランスロットもいるからあなたも安心でしょ」
ぐいぐい来るタマンサ。
情熱に火が点くと後先考えずに突っ走る性格なので、そうなったら誰も止めることは出来ない。
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