表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
449/592

ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 37

「天使、あなた天使なの?」

 着替えの最中のあられもに格好で、タマンサはカーテンから飛び出した。

 目はミケラと同じくらいにキラキラ輝いている。

「タマンサさん、ダメです」

 その後を、モモエルが大きい布を持って追いかけ、タマンサの頭から被せた。

「おおっ、天使だ」

 モモエルのうしろから着替えの途中のミケラが、目をキラキラさせて走って来る。



 二人の表情を見てモモエルは、

「二人はやっぱり親子です、血は繋がっていなくても本当の親子です」

 心の底から思った。

 ミケラが産まれた頃から四歳になる頃まで、一家の生活を支える役目をしてきた。

 四年近く一家見てきた、タマンサとミケラを見てきた。

 幸せな二人の顔を見てきた。

 ミケラがいつか王宮に戻る身だというのは知っていたけれど、いつまでも幸せが続いて欲しいと思っていた。

 魔法道具研究所の所長を拝命し、倉庫の女将さんに後を託したが、職員に様子を見に行かせたり、自分で何度も見に行ったこともある。



 しかし、運命は残酷にも一家からミケラを引き剥がしたのだ。

 それにどうすることも出来ない自分を、モモエルは悲嘆した。

 運命は更に一家を苦しめるかのように、タマンサは病に倒れてしまう。

 その病も、突然現れたマオによって癒やされたのだが・・・

 そこまで考えて、モモエルの中に何かが閃いた。

「もしかしてあの子も・・・」

 天使の翼を持つ目の前の少女は、ミケラに何かをもたらすために現れたのかもしれないとモモエルは思ったのだ。

 



「ねえ、この子なんなの?本当に天使なの?」

 タマンサがモモエルに詰め寄る。

「そ、それより先に着替えて下さい。お話はその後で」

 タマンサに気圧されてタジタジになりながらも、なんとか先に着替えて貰おうと頑張るモモエル。

「まっ、いいわ・・・ミケラも先に着替えましょ」

 ミケラの手を取ってカーテンの方へ連れて行こうとするが、

「え~~っ、やだ」

 とミケラはぐずる。

「どうして?」

 タマンサはしゃがんで、ミケラの顔を見る。

「だって」

 と言いつつミケラはゆいの方を見上げた。

「あの子のことが気になるのね?」

「うん」

 タマンサはゆいの方を見上げて、

「この子を着替えさせるから、待っていてくれる?」

 と声をかける。

 ゆいはしばし迷ったが、

「う、うん」

 と小さく頷いた。

 どのみち、この場に残るしかゆいには選択肢は無いのだ。

「ほら、お姉ちゃん待ってくれるって。先に着替えようね」

「ホント、ホントに待っていてくれる?」

 ミケラが聞くと、

「待ってる」

 と少し大きい声で返事を返すゆい。

「ほら、待っていてくれるでしょ。さっ、着替えよう」

「うん」

 そのままタマンサに連れられて、ミケラはカーテンの向こうに消えた。


(Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ