ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 36
「昼間はうち来てもいいよ」
トランスロットが珍しく意見を言った。
「嬉しいけど、タマンサさんの許可取らなくていいの?」
モモエルが心配して聞いた。
「大丈夫だと思う、夜はミケラが帰ってきたら寝る所がないけど、昼間だけなら・・・ボク、一生懸命お願いするから」
真剣な目で話すトランスロット。
「それじゃあ、わたしからもお願いしてみるわ」
モモエルも一緒にお願いしてくれることになった。
舞台の方から盛大な拍手と喝采が聞こえてきた。
「タマンサさんの歌が終わったようね」
モモエルはゆいとトランスロットを手招きすると、
「じゃあ行きましょう」
二人を伴って舞台に向かって歩き始める。
「ありがとう、ありがとう」
舞台の上で盛大な拍手を受けてタマンサは何度も頭を下げる。
それからチラッと舞台の袖を見て、マオやレッドベル達が来ているのを確かめると、
「みんな出てきて頂戴」
舞台に呼び寄せる。
「本日の出演者一同に、今一度拍手をお願い致します」
盛大な拍手が観客から送られ、
「みんな、頭を下げて」
タマンサに言われて、ちぐはぐに頭を下げる。
再び起こる拍手と歓声。
「本日の出し物はこれにて終了致します、お越し頂きありがとうございました」
前に一歩出て、タマンサが頭を下げて幕が下りた。
「みんな、お疲れ様」
タマンサは一人一人にねぎらいの言葉をかけ、ミケラとサクラーノの手を引いて舞台の袖へと戻る。
舞台の袖ではモモエルとトラスロット、それと見知らぬ女の子が待っていた。
「モモエル、舞台の設置ありがとうね」
モモエルにも感謝の言葉をかける。
「で、その子は?」
トランスロットの背中にしがみついて、自分の方を怖々見ているゆいについて聞く。
「この子のことで、少しお話があるの」
「ここじゃ何だから、楽屋へ行きましょう」
モモエル達と共に楽屋へ向かう。
「ここ、わたし専用みたいなモノだから寛いでね」
舞台衣装に着替えたのはタマンサとミケラだけなので、楽屋はタマンサ専用になってしまったのだった。
「先に着替えちゃうから、ちょっと待ってね・・・ミケラもいらっしゃい」
「ミケラ様のお着替え、わたしもお手伝いします」
モモエルがミケラとタマンサと共にカーテンの向こうへと消える。
「サクラーノ、こっちへおいで」
トランスロットは、サクラーノを自分の隣の席に座らせ、ゆいはトランスロットの反対側に座った。
「お姉ちゃん、誰?」
サクラーノが物怖じなくゆいに聞く。
「わたしはゆい、天使なのよ」
小さい子供は平気なようで、怯えた様子も無くサクラーノに返事を返す。
トランスロットが少し驚いた表情をするが、
「わたしにも妹がいるから」
ニコッと笑うゆい。
後から生まれた天使の面倒を見ていたので、小さい子とは普通に話せるのだ。
「お姉ちゃん、天使なの?」
目を丸くして驚くサクラーノ。
「本当だよ、ほら」
ゆいは立ち上がると、純白の翼を出して広げてみせる。
その神々(こうごう)しさに、
「おおっ!」
感歎の雄叫びを上げるサクラーノ。
「サクラーノ、何を騒いで・・・」
サクラーノの雄叫びを聞いて、カーテンから首を出したタマンサは、ゆいの翼を見て言葉を失った。
後書きです
最近、ネトフリをよく見てるんだけど、見たいと思っていた「スタートレック・エンタープライズ」や「フラッシュ」があるのに気が付いた。
どちらもシーズンがかなりあるので、見るのが大変そう。
面白いドラマを観るのは、創作の肥やしになるので頑張って観ます。
ではまた来週(@^^)/~~~
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