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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 28

「わたし、あなたなんて大嫌い」

 ゆいはマオに向かって、ビシッと宣言する。

「な、なんじゃと」

 突然のゆいの宣言に驚くマオ。

「急に、どうしたのさ?」

 驚いたのはトランスロットも同じだった。

 さっきまで、知らない人間におどおどしまくっていた態度とは大違いなのだから、驚くなと言う方が無理だろう。

「だって、だって、こいつの所為でわたしがナナ様と遊ぶ時間が減ったから・・・」

 遊ぶ時間が減ったの部分は恥ずかしかったのか、かなり小さい声だった。

 でも、トランスロットはゆいの気持ちがなんとなく判った。

 サクラーノが生まれ、その後、生まれたばかりのミケラがやって来た。

 それでタマンサもロレッタも、ミケラとサクラーノに集中して、その分寂しい思いをしたのだ。

「寂しかったんだね」

 トランスロットに言葉にドキッとするゆい。

「あ、あんたなんかに・・・わ、わたしの気持ち判らない・・・わよ」

 ふて腐れるようにそっぽを向く。

「判るよ、ボクも同じだったから。妹が二人出来て、お母さんもお姉ちゃんも二人にかかりきりになって・・・」

 あの時は父親も亡くしたばかりで、トランスロットには家族を三人失ったような感じだったのだ。



 トランスロットの目を見た時、ゆいは自分と同じ目をしているのに気がついた。

「あ、あんた・・・」

「ぼくはトランスロットって言うんだ」

 自分の名前を教えるトランスロット。

「君は?」

「ゆ、ゆいよ」

 小さく、直ぐ近くにいるトランスロットにやっと聞こえるような声で、自分の名前を教える。



「ゆいって言うんだ、可愛い名前だね」

「あ、ありがとう・・・ナナ様が付けてくれた名前なの、えへへへへ」

 名前を誉められて喜ぶゆい。

 その笑顔にドキッとするトランスロット。

「わ、笑うと、か、可愛い・・・」

 真っ赤な顔をしてそれだけ言うと、トランスロットは俯いてしまう。

「な・・・あ、ありがとう・・・ナナ様も笑うと可愛いって言ってくれるの」

 ゆいも真っ赤な顔をして下を向く。

 二人の間に流れるむずがゆい空気に耐えきれずに、

「お主、予に話が有ったのではないか?」

 とマオはツッコミを入れてしまう。



 はっと我に返る二人。

「そうよ、魔王。あんたの所為でわたしは・・・ナナ様に・・・」

 最後の方は相変わらずであった。

「最後の方が良く聞こえなかったぞ、はっきりと申せ。それに予は、あんたではない。マオという名前があるのじゃ」

 きっぱり言い切るマオ。

「ま、マオって言ったわね。どうしてあなた、この街にいるの?」

 再生させた後、ネビュラ・ナナがどこかに送り出したまでは知っていたが、どこに送り出したかまでは知らされていなかったのだ。

「知らぬ、気がついたらこの近くの草原におった。それで勇者を追いかけてこの街に来たのじゃ」


                         (Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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