転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その21
虎次郎は木の枝を手にして意気揚々とミケラの元へ戻る。
勝ったし、武茶志も怪我をしていなかったのでミケラに誉めて貰えると心の中で算段し、それが表情にまで出てしまいにやけまくっていた。
が、世の中そんなには甘くない。
「虎次郎、あんなに強く武茶志を飛ばしちゃメッなの」
ミケラの前へ立つなり怒られた。
誉められると思っていた虎次郎は、いきなり怒られてオロオロとしてミケラと武茶志の顔を交互に見る。
「お姫様、虎次郎を許してあげて下さい」
武茶志がやって来て、助け船を出す。
「ほら、俺こんなに元気だし」
腕をぐるぐる回して元気をアピールする。
「それに虎次郎が俺に剣を教えてくれるって言うんですよ、言わば俺にとっての師匠になるので、師匠を許してあげて下さい」
武茶志は頭を下げる。
「武茶志も大して怪我をしていないようですし、虎次郎に稽古を付けて貰えればこの世界に来たばかりの武茶志の助けになると思いますわ。なので許して差し上げては如何しょか?」
タマーリンも取り直す為に口を開く。
「うう・・・タマーリンがそう言うなら。これから人に怪我させたらメッだからね」
ミケラが軽く怒り、虎次郎も判りましたとばかりに首を何度も縦に振る。
「じゃあ、許してあげる」
それを聞いて虎次郎はホッとする。
「良かったな旦那」
「良かったね旦那」
チャトーラとチャトーミが両側から肩を組んできた。
「ふふふ」
タマーリンは武茶志を見てニコッと微笑む。
タマーリンに微笑みかけられて逆に武茶志は逃げ腰になる。
さっきトラウマをえぐられたばかりなので無理もない。
「あら、逃げ腰にならなくても宜しいですわ、わたくし、今は何もしませんから」
「今」という部分をわざとらしく強調した。
「今は・・・ですか」
武茶志は内心、「速くこの場を離れないとやばい」と冷や汗を流しまくる。
「わたくし、今はとても気分がいいのですよ。とても面白い物を見せて貰いましたから」
虎次郎との試合で武茶志がプロテクションで身を守っていたのを見逃さなかったのだ。
しかし、武茶志はタマーリンが何を言っているのか判らなかった。
「面白い物?な、なんですか?」
武茶志の返答を聞いて、武茶志がプロテクションを無意識で使っているのに気が付く。
「あれを無意識で使っているとしたら・・・うふふふ、面白い子ね」
悪戯っぽい笑みを浮かべた。
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