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転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その20

 勝負は一瞬でついた。

「この勝負、虎次郎の勝ち」

 タマーリンが高らかに宣言する。

「ゲホゲホゲホ」

 武茶志は咳き込みながら何とか立ち上がる。

「怪我は・・・ないみたいだな」

 武茶志は服に着いたほこりを叩きながら身体の具合を調べる。

 身体はあちこち痛むが、不思議と怪我らしい怪我はどこにもない。

「あれだけ激しく地面に叩き付けられたのに、これが勇者のタレントの力か?」

「大丈夫かい武茶志?」

 チャトーラが声をかけてきた。

「大丈夫、怪我はしてないです」

 武茶志は明るく笑って答える。


 少し前、虎次郎は木の枝を振った構えのまましばらく固まっていた。

 木の枝が武茶志の構えた剣に振れた瞬間、妙な感触があったのだ。

 勢いよく地面に叩き付けられた武茶志が何事もなかったように立ち上がるのを見た。

 あれだけの勢いで地面に叩き付けられば、しばらく動けないはずだ。

「プロテクションか・・・面白い、しかしまだ使い方がなってないな」

 そう小さく呟くと武茶志の方へ向かって歩く。

「虎次郎、貴方は本当に強いですね」

 武茶志はヘラヘラ笑う。

 圧倒的力量の差を見せつけられ、つい生前のサラリーマンだった時の癖が出てしまった。

 仕事は営業兼仕入れだった。

 さほど大きい会社ではなかったが、仕事は切れないであったのでメーカーに行っては頭を下げ、下請けに行っては頭を下げの繰り返しだった。

「忙しかったが、それなりに充実はしていたな・・・」

 と生前の事を思い出す武茶志であったが、その武茶志の肩を虎次郎は両肩に手を置いてガッチリと掴む。

「な、なんですか」

 突然の事に、焦る武茶志。

「ふふふ、武茶志お前は面白い。私が鍛えてやろう」

 それだけ言うと去って行く。

 成り行きが判らず、唖然とする武茶志。

「旦那から鍛えてくれるとか、滅多に無い事だぞ」

「そうそう、旦那は本当に他人に剣を教えるの好きじゃ無いからね、武茶志よっぽど気に入られたんだよ」

「そ、そうですか」

 武茶志は言われている事がよく判らず、曖昧に返事をする。

「前に姫様に聞いたけど、お城で兵隊に教えているのは王様に頼まれたからだって、本当の弟子は見込みがある相手じゃないと弟子にしないんだって言ってたよ」

「えっ、そうなんですか」

 チャトーミに意外な話を聞いて武茶志は改めて虎次郎の後ろ姿を見た。

「俺、見込み有るんだ」

 心の中で「頑張るぞ」と気合いを入れる武茶志であった。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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