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ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 13

「これを覚えれば良いのじゃな?」

 マオはタマンサに渡された原稿を見る。

「登場する時に言って頂戴。出来る限り迫力のある声でお願いね」

「判ったのじゃ」

 ミケラの出し物をやるというのならマオの存在は欠かせない、ミケラとマオはセットであの出し物は成り立つのだから。

 宿屋ではマオはあまり目立てなかったので、タマンサとしてはそれが悔やまれていたのだった。

 こうして再演する機会に恵まれたからには、このチャンスを最大限利用するつもりでいたのだ。



「それと衣装の方もお願い」

 マオは自分の翼を衣装のように変形させる事が出来る。

「じゃが、予は衣装と翼を一緒に出す事は出来ぬぞ」

 今回は空中から登場する事になっているので、翼は必須だった。

 だが、マオはミケラに以前、闇の力の殆どを吹き飛ばされていて、その力は少ししか回復しておらず、翼を出すか衣装を作るかのどちらかしか出来ないのだ。

「それは任せておいて頂戴」

 タマンサはマオに耳打ちする。

「うむ、それならばなんとかなりそうじゃな」

 マオはタマンサが耳打ちした話に納得したように頷く。

「これで少し練習しておいて」

 大きめの布をタマンサはマオに渡すと、足早に別の所に向かっていった。

「忙しいのう」

 タマンサを見送るマオは、渡された布を見て、

「練習しておくかのう」

 楽屋になる予定の場所の隅で、練習を始めた。



「タマンサ、こっちは出来たよ」

 お妃様が声をかける。

「お婆ちゃん、お疲れ様」

「お婆ちゃんて言うな、あんたに言われると腹が立つ」

 お妃様は怒る。

「なんでよ、それともくそ婆の方がいい?」

 タマンサにくそ婆と言われてお妃様は溜め息をつく。

「なんであんたはそんなになったんだろうね、初めて会ったときは純情ないい子だったのにのにさ」

 お妃様はタマンサと初めて出会ったときのことを懐かしそうに思い出す。



「もう止めてよ、十歳の頃の話を今更されても困るわよ」

 タマンサは口を尖れせる。

 十歳の頃、歌を歌う事が好きで好きで毎日のように村はずれの丘の上で歌っていた。

 一年に一度村に訪れる吟遊詩人に憧れ、いつか自分も村を出て吟遊詩人のようになりたいと、吟遊詩人の真似事をしていたのだ。

 そして偶然、村に訪れたお妃様に付いていって家出をしたのだ。

 それから、お妃様と共に方々を歌って歩いて回った。


                       (Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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