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転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その19

 「はい、はい、集まって。それでは今度は剣術の競技をしますわよ。虎次郎、武茶志、準備は宜しい?」

 既に虎次郎と武茶志は草原に対峙していた。

「うむ」

 虎次郎は短く答え、

「俺の方もいいですけど、虎次郎は本当にそれでいいんですか?」

 武茶志の聞いたのは虎次郎の手にしている木の枝の事だ。

 虎次郎は愛用の刀ではなく、どこで拾ってきた木の枝を手にしていたのだった。

 虎次郎は手にした枝を見てから、

「ふっ、お前の相手にはこれで充分」

 と鼻先で笑う。

 そして、思い出す。

 競技を決める時に剣術で虎次郎が戦う事が決まった後に、

「旦那、武茶志を斬っちゃダメですからね」

 チャトーラに言われて虎次郎は「えっ」と驚く。

 その後続けて、

「怪我もさせちゃダメだよ、怪我させたら口聞いてあげないから」

 更にミケラに追い打ちをかけられ、虎次郎は「ガーン」と衝撃を受ける。

 しばらくオロオロした挙げ句に、見つけてきたのが手にしている木の枝だったのだ。

 愛刀はミケラの椅子の横に置いてきた。

「虎次郎がそれでいいならいいでしょう。それと貴方」

 タマーリンが武茶志の方を向く。

「ちょっとその剣を振ってみなさい」

「これですか?」

 武茶志が剣を指差し、タマーリンが頷く。

「振りますよ、よっ、はっ、やっ」

 武茶志は子供の頃、テレビで見た時代劇宜しく剣を振り回す。

 それを見てタマーリンは頭を抱えた。

 剣術に関してはド素人同然のタマーリンすら、武茶志の剣の扱いはなっていないのが判ったからだ。

「武茶志、貴方は前世でも剣なんてろくに扱った事は無いでしょ?」

 武茶志は素直に頷く。

 平和な日本で育ったので剣どころかナイフだって触った事は無い、触った事のある刃物と言えばカッターか包丁くらいのモノだ。

 タマーリンはヤレヤレとばかりに首を振り、

「身の程を知りなさい、この男、虎次郎は剣の腕は相当立ちますから。木の枝でも貴方に勝ち目など有りませんわ。胸を借りるつもりでおやりなさい」

 その言葉に武茶志はカチンときたが、言い返すと何倍になって返ってきそうなので黙っておく事にする。

「それでは始めましょう、両者構えて」

 合図と供に武茶志は剣を構える。

 虎次郎は確かめるように何度か木の枝を振った後、無造作に構えた。

 虎次郎が構えを取った瞬間、雰囲気が一変する。

 ミケラの為に日傘を差していた時の雰囲気は霧散し、静かなれど激しい覇気がその身体から溢れ出す。

 その覇気に振れた瞬間、武茶志の中の何かが最大限の警報を鳴らした。

「逃げろ、逃げろ、逃げろ」

 その衝動が身体の内側からき上がる。

 しかし、蛇に睨まれたカエルの如く、武茶志は一歩も動く事が出来ない。

 圧倒的技量の差の前に飲み込まれてしまったのだ。

 唐突に虎次郎の姿が消えた。

 武茶志に出来たのは咄嗟に僅かに剣を動かす事のみ。

 瞬時に虎次郎の姿が目の前に現れ、手にした木の枝を無造作に振る。

 木の枝が剣に振れた瞬間、剣ごと武茶志の身体が吹き飛んだ。

「ぐふぉ」

 地面に激しく叩き付けられて肺の中の空気を全て吐き出す。


(Copyright2022-© 入沙界 南兎)

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