表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
419/589

ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 7

「お姉ちゃん達、なんで耳と尻尾がないの?」

 サクラーノが不思議そうに聞く。

「わたし達が人間だからだよ、人間は頭の上に耳が無いし、尻尾も無いからね」

「人間?」

 首を捻るミケラとサクラーノ。

「見た事ない?」

「うん」

 二人とも頷く。



 ケットシー王国の王都に住む人間は少なく、殆どが王宮か魔法道具研究所にいるので、ミケラ達が外にいる時間に街に出てくる事はあまりないのだ。

 ミケラはお城から抜け出している事が多いので、お城の中で出会う事もない。

 他にもドワーフやエルフもいるが、やはり自分達のコミュニティーから出てくる事は滅多にないので、ミケラ達は存在すら気がついていなかった。



「でもよ、泊まっていた旅館の仲居さんに人間いたし、宴会のお客さんは殆ど人間だったぞ」

 チャトーラが指摘したが、

「そうだった?」

「わかんない」

 ミケラとサクラーノはお互いに顔を見合わせ、二人の頭の上に?マークが浮かぶ。

 二人とも本気で覚えがないようだ。

 初めての旅行、初めての出し物の準備と出演で浮かれてしまい、気がついていなかった模様。



「人間にだって耳はあるんだぞ」

 キマシの言葉に、

「どこに?」

「耳、どこ?」

 目をキラキラさせて聞くミケラとサクラーノ。

「教えて欲しい?」

「教えて、教えて」

「教えてよ」

「そこまで言うなら仕方ない、このキマシ先生が教えて進ぜよう」

 有頂天モードは継続中のようだ。



「わたしの事はキマシ先生と呼ぶんだぞ」

「はい、キマシ先生」

 ミケラとサクラーノはハモって答えた。

「ならばしかと見よ、人間の耳はここだ!」

 自分の耳を指さす。

「な~~んだ」

「そこなんだ」

 あからさまにがっかりする二人。



 慌てたキマシは、

「ちょっと待ってね・・・そ、そうだ、触ってみる?わたしの耳、触っていいよ」

「いいの?」

「おおっ!」

 キマシの提案にあっさりと食い付いてくる二人。



「触って、触って」

 二人の顔の高さまで顔を下げると、耳を二人に向ける。

 二人は手を伸ばしてキマシの耳を触る。

「プニプニしてる」

「うん、わたし達の耳と違う」

 二人は初めての感触にしばらくキマシの耳を触り続けた。

 ケットシーの耳は猫と同じくかなり薄い、対して人間の耳は肉厚で弾力があるのだ。

 初めての感触に驚きの表情でその感触を楽しむ二人。



「わ、わたしも二人の耳に触っていいかな?」

 と聞かれて、ミケラとサクラーノは困ったように顔を見合わせた。

 ケットシーの耳は猫の耳と同じく、虫が入り難くするために耳毛が生えているのだが、その耳毛に触られるともの凄くくすぐったいからだ。

「ほらほら、二人が困ってるじゃない。嫌がる事はしちゃダメだよ」

 ギリが止めに入ってくれる。

「そうだぞ、またお父さんに怒られるぞ」

 レッドベルにお父さんと呼ばれて、チャトーラはやれやれまたかよと溜め息をつく。 


(Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ