ケットシー物語 トラスロット奔(はし)る 4
ミケラ達グループの方では、キマシがすっかり打ち解けていた。
「お姉ちゃん、凄い」
サクラーノが目を丸くして驚いていた。
「わはははは」
さっきまでミケラとサクラーノに引かれて、落ち込んでいたのが嘘みたいだと思う程、キマシは有頂天になっていた。
「もう一回やって」
キラキラした目でミケラにおねだりされて、
「仕方ないわね、この大魔法使いキマシ様の大魔法を簡単に見せるわけにはいかないけれど、どうしてもとお願いされたのならお見せするのは吝かではないわ」
すっかり調子に乗っている。
「それじゃあもう一回やるから、よ~~~く見ていてね」
キマシの返事に、ミケラとサクラーノは目をキラキラさせて喜ぶ。
もったいぶってキマシは左手を前に出して握り拳を作り、親指を立てる。
それから立てた左手の親指を右手の人差し指を巻き付けて見せた。
「チチンプイプイ~~、あ~ら不思議、親指が取れっちゃった」
右手を左手から離すと、なんと左手の親指が取れてしまったではないか。
「うぉぉぉぉ」
「うわぁ、すごい」
目を丸くして驚くサクラーノに、キャッキャと喜ぶミケラ。
「この取れた指が~~~、こうやって、こうすると」
キマシが右手を大きく動かした後に、左の拳にくっつけると、
「ほら、元通り」
手を開いて左手の親指を動かしてみせる。
「どうなってるの?どうなってるの?」
サクラーノとミケラは拍手喝采で大いに喜んでいた。
「子供だましね」
「わたしもお父様に見せられた時はびっくりしましたけれど、こうして改めて見せられると恥ずかしいです」
ギリとレッドベルが、いい気になっているキマシを見ながらひそひそと話す。
「わははは、どうよこの大魔法使いキマシ様の魔法は」
子供達にうけて天狗になっているキマシの横から、
「いい加減にしなよ、ネタばらすよ」
とギリに言われ、ギクッとなるキマシ。
「ね、ネタなんてないから、これはわたしの、大魔術だから」
口の中でもごもごと言い訳をするキマシと、キラキラとした目でキマシを見ているミケラ達を見比べて、ギリはそれ以上言うのは止める事にした。
子供のうちは夢があった方がいいかなと、考えを変えたのは秘密である。
「それにしてもあんたらタマーリンの所に世話になるとか、いい根性してるな」
チャトーラがしみじみ言う。
タマーリンには散々酷い目に合っている身としては、つい言葉が出てしまったのだ。
「タマーリンさん、いい人だよ」
「あたし達、砦でお世話になったし、仕事も住む所もお世話になってるから」
砦だと命がけの戦いをしなければならないが、ここに居れば命まで取られる事はないし、四人部屋だったのが三人とも個室まで貰えている。
おまけに給金まで良いのだから、文句を言う方が罰が当たるというモノだった。
「ふ~~ん、こう言うのを鬼のなんちゃらって言うんだろうな」
チャトーラは信じられないようなモノを見る目で、離れた所にいるタマーリンを見た。
(Copyright2024-© 入沙界南兎)