転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その18
しかし、もう手遅れだった。
「・・・お母ちゃんのパン・・・お母ちゃんのパン・・・また食べたいよ・・・・・・うわぁぁぁん!・・・お母ちゃん、お母ちゃん、お母ちゃん」
チャトーミは泣き叫ぶ。
「お、おい、チャトーミ・・・」
泣き叫ぶチャトーミの横でチャトーラはオロオロするだけだった。
兄という生き物は目の前で妹に泣かれるのに弱いというのは、全ての兄の遺伝子に書き込まれている事なのかもしれない。
唐突に横で寝転がっていたミケラが泣くチャトーミの身体にぎゅうっと抱きつくと、頭を撫で始める。
「大丈夫だよチャトーミ、私がいるからね」
「じめざばぁぁぁっ」
チャトーミもミケラにしがみつきいて泣き続けた。
「はい、はい、チャトーミはいい子、チャトーミはいい子」
ミケラは泣いている間中、チャトーミの頭を撫でていた。
「落ち着いたか?」
しばらくしてチャトーミは泣き止む。
「うん」
「ほら、顔拭けよ」
涙でべちょべちょになったチャトーミに、チャトーラが手ぬぐいを渡す。
「姫様もありがとうな」
チャトーラがミケラにお礼を言う。
「うん、ありがとうね姫様」
チャトーミもお礼を言う。
「お母さんが私が泣いた時に、いつもぎゅうってしてくれた頭を撫でてくれるの」
ミケラはニコッと笑う。
「そうか、いいお母さんだな」
「うん、お母さん大好き」
お母さんを誉められてミケラはこれ以上無いという笑顔で笑う。
「そろそろ次の競技が始まるみたいだから行くぞ、立てるかチャトーミ?」
「うん大丈夫」
チャトーラの差し出した手に捕まってチャトーミは立ち上がった。
「姫様も行こう」
「うん」
ミケラとチャトーミは手を繋いでチャトーラの後に続く。
「チャトーミ、泣いていたようですが大丈夫ですか?」
みんなのところに戻ると、クロが心配して声をかけてきた。
小妖精達もチラチラとチャトーミの方を見ている。
「大丈夫、もう落ち着いたから」
チャトーラが心配をかけまいとカッカッカッと笑う。
「小さい時から両親にべったりの甘えん坊だったのが、急に流行病で二人とも死んじまったから・・・いつまでも子供で困るぜ」
チャトーラの言葉にチャトーミはむっとしたが、今泣いたばかりなので何も言えない。
「チャトーミは今お幾つで?」
「えっ、歳か?えっと、17になるよな?」
チャトーミに確認するように振り向く。
「うん、この前、誕生日だったから17になったよ」
「ええっ!」
17と聞いてクロは大げさに驚いた。
「だろ、本当に子供っぽくてよ、17になんて見えないだろ」
「いえいえ、チャトーラが17歳だと言う事の方に驚いたんですよ」
「うっせぇぇぇ!おじん臭くて悪かったな」
チャトーラはクロの頭をひっぱたいた。
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