外伝1「さすらいの勇者1ー143」
「お、お、お、お飲み物・・・お、お、お、お持ちしました」
小柄な別の天使が、恐る恐る近寄ってきて飲み物を置くと逃げるように去って行く。
「もうユイったら」
ネビュラ・ナナは溜め息をつく。
「済みませんね、あの子人見知りが酷くて。ここに滅多にお客様も来ないから、なかなか人見知りも直らないのよね」
ネビュラ・ナナは、困ったわと言わんばかりに首を傾げる。
「うんまぁ」
武茶士は置かれたコーラを飛びつくように飲むと、目頭に涙がにじむ。
「どうか致しましたの?」
心配そうにネビュラ・ナナは無茶士の顔を覗き込む。
「いえ、嬉し過ぎて。もう飲めないと思ってから・・・」
武茶士は目の端を拭う。
コーラジャンキーだったのが、突然飲めなくなったのだから仕方ない。
「本当に、本当にレシピ貰えるんですよね?」
念を押す。
レシピさえ有れば、それをモモエルに渡せばなんとかなると思っていたのだ。
自分のつたない説明から、数々のモノを作り上げたモモエルを武茶士は信頼していた。
「はい、それは間違いなく」
それを聞いてほっとする武茶士。
「ナナ様、こちらにお呼びしたお話をしないと」
ミームに促されて、
「そうですわね、無茶士さん、こちらに来て貰ったお話をさせて下さい」
ネビュラ・ナナは改まって姿勢を正す。
「はい、何でしょうか」
武茶士も慌てて姿勢を正した。
「あの魔主を倒して頂いてありがとうございました」
ネビュラ・ナナとミームは頭を下げる。
「いえ、俺、勇者なんで、あれも俺の仕事の内ですから・・・お礼を言われる程の事は。とにかく頭を上げて下さい」
神様に頭を下げられて慌てる武茶士。
「そうもいきませんわ、あなたは猫神がお礼としてあの世界に転生させたのですから。転生してあまり日も経っていないのに、あんな大物と戦わせてしまって申し訳ないと思っているんですよ。それに、あの魔主は突然変異で危ない奴だったんです。あのまま放置しておくと大変な事になっていましたから、退治してくれて本当に助かりました」
改めてネビュラ・ナナとミームに頭を下げられて、恐縮しながらもそれを受け入れる事にする。
「そう言って貰えると嬉しいですけど・・・でも、俺もあの世界の住人なんだし、そこで力が必要にされるなら、俺は何度だって力貸しますよ」
澄んだ瞳で武茶士はネビュラ・ナナを見つめた。
「真っ直ぐな方なんですね」
それからゆっくりと飲み物を飲むと、
「こちらとして出来るお礼としては、無茶士さんが望むなら、元の世界に復活せせる事も出来ますが」
ネビュラ・ナナの言葉に、
「えっ」
と固まる武茶士。
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