外伝1「さすらいの勇者1ー142」
「あれ、ここは?」
武茶士は見覚えのない場所で目覚めた。
ベッドに寝かされているようだが、見上げているのは天井では無く荘厳な輝きを放つ星の海だった。
「目覚めましたのね」
声がしたので身体を起こし、声の方に顔を向ける。
光に包まれた女神ネビュラ・ナナがいた。
「あっ、女神様」
武茶士は起き上がると頭を下げる。
「うふふふ、あなたはお客様なのだからあまり気を遣わなくていいのよ」
光に包まれ表情は判らないはずなのに、武茶士にはネビュラ・ナナが嬉しそうに笑っているのが判る。
「立ち話も何ですから、座りましょう」
ネビュラ・ナナが軽く手を振ると、テーブルと椅子が二脚、空中から突然現れた。
「さっ、座って下さい」
言われるままに武茶士は椅子に座る。
「座り心地が良い」
見た目はシンプルな木の椅子にしか見えないのに、座ってみると最上級のソファー並の座り心地の良さに武茶士は驚く。
「凄い座り心地良いですね」
それを聞いてニコッと微笑むネビュラ・ナナ。
「それは造作神が作ってくれたのよ、気に入ったのなら上げま・・・」
ネビュラ・ナナの言葉が終わらないうちに、ネビュラ・ナナの後ろに背中に真っ白な羽の生えた女性が現れて、
「ナナ様、神界のモノを無闇に人間に与えてはダメと何度も言ってますよね?」
その声を聞いた瞬間、ネビュラ・ナナが固まった。
「ミ、ミーム、わ、判っているわよ・・・ちょ、ちょっと言ってみただけじゃない」
「本当に、本当に判っているんですか!」
ミームにぎろっと睨まれて、
「ひ~~~ん」
と泣きそうになるネビュラ・ナナ。
「お見苦しい所をお見せしましたわね、オホホホホ」
涙目になったのを笑って誤魔化すナナ様。
「ナナ様、お客様に何かお飲み物でもお出し致しましょうか?」
ミームが耳元で囁く。
「そうね、無茶士さん何かご希望はあるかしら?」
「飲み物ですか・・・う~~ん」
言われて、これと言って思いつかなくて頭を捻る。
ケットシーの街ではお茶っぽいモノやコーヒーぽいモノはあるにはあるのだが、どうしても飲みたいものではなかったのだ。
「あなたが元いた世界の飲み物でも構わないわよ」
それを聞いた瞬間に、
「コーラ、コーラお願いします!」
身を乗り出して叫ぶ。
「うふふふ、そんなにコーラはお好きなんですか?」
「はい、コーラジャンキーですから。人間だった頃は、毎日、最低二リットル飲んでました」
胸を張る武茶士。
「ケットシーの街では飲めなくて、本当に辛かったです」
「あらら、何ならレシピ差し上げましょうか?」
ネビュラ・ナナの申し出に、
「いいんですか?」
「はい・・・そ、それくらいは良いわよねミーム?」
恐る恐る後ろにいるミームに確認を取るネビュラ・ナナ。
ミームは溜め息をつくと、
「それくらいは構わないと思います・・・くれぐれも、ついでにと余計なモノは渡さないで下さいよ」
念押しされて、
「む~~」
とネビュラ・ナナは唸る。
どうやら相当やらかしているようだ。
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