外伝1「さすらいの勇者1ー138」
「魔法や炎がダメなら、わたしが行きます」
レッドベルが飛び出した。
稲妻斬で左右に飛びながら近寄ると、魔主の周りを守る魔獣の一体に体当たりをする。
体当たりされた魔獣はよろめき、魔主の側から離れた。
離れた魔獣を追いかけるように黒いもやが動く。
「このっ」
レッドベルはそのもやを剣で切った。
瞬間的にもやは切れたように見えたが、次の瞬間に膨らむトレッドベルを飲み込んでしまう。
「あううぅ」
もやの中で苦しそうにもがくレッドベル。
「レッドベル」
武茶士が駆け寄り、レッドベルと魔主の間のもやを切断するように結界を伸ばした。
レッドベルを飲み込んだもやは、魔主から切り離されると霧散してしまい、その場には膝を着き苦しそうに息をするレッドベルだけが残される。
「大丈夫かレッドベル」
「だ、大丈夫」
息を整え、立ち上がるレッドベル。
「あのもや、凄く気持ち悪いです」
引き攣った顔で魔主を見上げるレッドベル。
そこに僅かな隙が生まれた。
その隙を突き、無茶士とレッドベルを狙って魔主の前足が動いたのだ。
咄嗟にレッドベルの身体を抱えて地面を転がる武茶士。
ズズゥゥゥン
二人のいた場所を魔主の前足が叩き、激しい衝撃と振動が武茶士達を襲った。
「あれ喰らっていたら、俺の結界でも防ぎきれなかったな」
武茶士の背中に冷たい汗が流れる。
大猿も力が強かったが、今の一撃で魔主の力が大猿の比ではない事が判った。
レッドベルを抱えたまま武茶士は一旦、魔主から距離を取る。
その間に、タマーリンによって弾き出された魔獣は安全な場所に移動さていた。
「兎に角、魔主の周りの魔獣を何とかしよう」
レッドベルによって魔主から離せば魔獣の無力化は出来るのが判った。
助けられると判ったのなら、一匹でも多く助けたい。
その思いはここに居る者達の総意でもあった。
「あのもやに捕まると、凄く気持ち悪いです。なんて言うか心がぞわぞわします」
レッドベルの説明は判りにくかったが、あのもやに近寄ったことで武茶士も感じるモノがあった。
「悪意、そう悪意の塊のような感じがしたな」
魔獣から向けられていたのは敵意だった。
その敵意むき出しのまま、魔獣達はひたすら突き進んできていたのだ。
しかし、魔主から感じたのは悪意。
善意を否定し、堕落させようとする嫌な感じだったのだ。
他人の悪意に疎いレッドベルは、ぞわぞわと言う表現しか思いつかなかっただけなのだった。
魔主の周りの魔獣を排除すべく、武茶士達は動いた。
虎次郎とタマーリンが炎と風で牽制している間にレッドベルが魔獣を弾き出し、武茶士が無力化させると同時に結界でもやからガードする。
その間に、魔主から攻撃もあったがなんとかその攻撃も躱し、同時に反撃も行った。
やっとの事で魔主の周りにいた魔獣も引き離す事が出来た。
「さてと、準備は整ったな」
武茶士達は構えた。
反撃をした際、武茶士は結界による打撃を行ったのだが、それは黒いもやに邪魔をされる事無く魔主の身体に届いたのだ。
「物理攻撃なら届く」
そう確信した武茶士は、仲間にその事を伝えた。
「うむ」
虎次郎は纏っていた炎を消す。
「あらそうですの、あまり得意ではないからわたくしはこのまま後方支援を致しますわ」
そう言いながらにやっと笑うタマーリン。
その笑いを見て、武茶士は背中がぞくっとした。
「絶対、何かやらかす」
直感が告げている。
「それに巻き込まれないぞ」
と強く誓うのだった。
後書きです
やっちまいました、いつもはポメラで一話千文字前後になるように分けてから投稿しているんですけど、
今回、完璧に忘れていました。
暑くてね、頭が完全におバカになっていますわ。
ちょっと読みにくいかもしれませんが、今回だけ、たぶん、今回だけだと思うので・・・
大丈夫、きっと大丈夫なので見捨てないでぇ( ;∀;)
ではまた来週(@^^)/~~~
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