外伝1「さすらいの勇者1ー136」
武茶士達は黒い塊がはっきりと見える所まで迫った。
「でかい」
武茶士はその大きさに絶句し、
「大きいね」
レッドベルは目を丸くして驚く。
「ドラゴンよりは小さいですわね」
タマーリンは鼻先で笑い、
「・・・・・・」
虎次郎は・・・いつも通り。
その黒い塊、魔主は先ほどの大猿の二倍の大きさは余裕であった。
その巨体の周りを黒いもやのようなモノが覆い、形を判りにくくしている。
かろうじて熊だとは判ったが。
魔主の前を多くの熊型の魔獣が塞いでいた。
「何匹いても、この光の玉の前には意味はないさ」
武茶士が余裕を見せて笑い、前に出たが直ぐにその顔が引き攣る事になった。
「なんでだ、なんでこの光が効かないんだ」
魔主から離れている魔獣には効果があったが、魔主の近くにいる魔獣は光の玉から出る光を受けても、その目から敵意が消えなかったのだ。
魔主も当然、強烈に敵意を武茶士達に向けていた。
「光の玉の光が効かないなんて・・・」
慌てる武茶士。
光の玉の光を魔主に当てれば万事解決と思っていた計画が、あっさりと覆されてしまったのだ。
「これは魔主を倒すしか有りませんですわね」
タマーリンの言葉に、頷くレッドベル。
「そうか、それしか無いか」
武茶士も覚悟を決める。
無駄な争いは出来れば避けたかったが、そうも言っていられない。
「あいつを倒さないと、こいつら家に帰れないもんな」
魔獣達を元いた場所に返す、その為に心を鬼にして無抵抗な魔獣達を吹き飛ばしてここまで来たのだ。
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