外伝1「さすらいの勇者1ー133」
「ねえ、あの光の玉の中にいる女の子、可愛いね」
キマシが光の玉を見上げながらギリの肩を叩く。
キマシに肩を叩かれてギリも光の玉を見上げる。
「ホントだね、可愛い女の子だ。ケットシーの子供みたいだけど」
「ミケラ様だよ、ケットシー王国の末姫様だ」
近くにいたケットシーの兵士が教えてくれた。
「本当にいるんだ、お姫様なんだ」
キマシとギリが驚く。
「ああ、王都におられる・・・はずだ」
最後の方は言葉を濁す、ミケラがよくお城を抜け出してはお出かけしているのを知っているから。
「じゃあ、王都に行けば会えるの?」
「バカね、お姫様に簡単に会えるわけ無いじゃない」
ギリがキマシを窘めたが、
「ミケラ様ならしょっちゅうお城を抜け出しているから、運が良ければ街の中で会えると思うぞ」
「えっ、ホント」
キマシが滅茶苦茶嬉しそうに笑う。
ギリの方も、
「会えるのか・・・会えたら嬉しいな」
と遠い目をする。
二人とも知らなかったのだが、武茶士も虎次郎もタマーリンもミケラの関係者だとは。
そして、二人の願いはあっさりと叶えられる事も。
「虎次郎はこれからどうします?」
「お前はどうするつもりだ?」
逆に尋ねられて、
「俺はこのまま、奥に進みます。魔獣を魔主の呪縛から解放して上げたいですから」
魔獣の暴走は魔主が原因だ、このまま進んで魔主に光の玉の光を当てれば全て解決すると、武茶士は考えていた。
「ならば、俺も付き合おう。さっさと終わらせれば早く帰れるからな」
言いながら虎次郎はちらっと頭上の光の玉の中のミケラを見て、顔がにたぁと笑う。
どうやらミケラ成分が足りなくなってきたようだ。
「わたしも付いて行く」
後ろから声をかけられた。
振り向くとレッドベルがいた。
「大丈夫か、この先結構有るぞ」
タマーリンと共に船に乗って、谷のかなり先まで見た武茶士は、谷がかなり長い事を知っていた。
今回は走って行く事になるので、レッドベルの体力を心配したのだ。
「体力には自信がある、それにその光を浴びていると疲れた気がしないんだ」
言われてみて、砦からここまで走ってきたのにまるで疲れていないのに気がつく武茶士。
「あの玉、なんか凄いな」
改めて頭上の光る玉を見上げる武茶士。
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