外伝1「さすらいの勇者1ー127」
レッドベルは武茶士に少し遅れて砦に到着した。
砦の門をくぐり、ジークや砦の兵達がオオカミ型の魔獣と戦っているのが目に入る。
「ジークおじさん、わたしも加勢するぞ」
「おおベルか、すまん頼む。俺はどうもこういったちょこまか動く奴は苦手だからな」
「うん」
ジークに頼まれて、嬉しそうに返事を返すレッドベル。
「稲妻斬」
レッドベルは稲妻斬で、近くにいたオオカミ型を数匹斬り倒す。
「なんだその技は!」
見た事のない技でレッドベルが魔獣を倒したので驚くジーク。
「師匠に教わった」
師匠とは虎次郎の事だが、虎次郎が教えたのは瞬歩だけで稲妻斬はレッドベルが自分で編み出した技なのだがレッドベルの中では、
「師匠に瞬歩を教わった、だから稲妻斬を使えるようになった。だから稲妻斬は師匠に教わった事になる」
と言う理屈になるらしい。
「そうか。で、師匠とは誰だ」
「師匠は・・・確か、ささ・・・ささ・・・笹かま虎次郎だったかな?」
笹かまになってしまった虎次郎。
「笹かま虎次郎?確かケットシー王国から、臨時の手伝いに来ている奴にそんな名前が有ったような?」
「それは佐々木虎次郎でしょう、ケットシー王国の末姫様の護衛を務めるているそうです」
大猿の咆哮を直ぐ近くで聞いてしまったため、戦線を離脱していたクロウベルが声をかけてきた。
「クロウベル、もう大丈夫か?」
「はい、不意打ちだったので防御出来ませんでしたが、耳がしばらく聞こえなかっただけでもう完全に大丈夫です」
元気をアピールするようにポージングしてみせる。
「それはそうとレッドベル、見事な技です」
「えへへ」
父親に誉められて子供のように無邪気に笑うレッドベル。
「はい、これも師匠のお陰です」
「そうですね、後でご挨拶に伺わないといけませんね」
「おうよそれより先に、こいつらをなんとかしないとな。いくぞ!」
砦内で兵士達を虎視眈々と狙うオオカミ型の魔獣に躍りかかるジーク。
「おうよ」
「はい」
ジークのかけ声と共に、クロウベルとレッドベルはオオカミ型の魔獣退治に走った。
「ふう、なんとか概ね片付いたか」
「レッドベル、よくやりました」
結局、オオカミ型はレッドベルが殆ど一人で倒してしまったのだった。
重くて大きい武器を持つジークもクロウベルも、小回りが利いて素早いオオカミ型に攻撃がなかなか当たらず、稲妻斬で素早く動き回るレッドベルのサポート役に回ったのだ。
「はい、お疲れ様でした」
砦の中の魔獣はあらかた片付き、谷から来る魔獣も数が減ったので櫓の上の弓兵だけで対処出来るようになっていた。
砦内に残るのは僅か数匹となり、それは兵士達に任せる事にしたのだ。
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