転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その16
「へへへへ」
抜き去る時、チャトーラは鼻先で笑いそのまま木の下まで走ると、ミケラの置いた白い玉を手に取ると引き返す。
「お先に」
チャトーラに抜かれた時点で立ち止まり、苦しそうに息をしている武茶志に手を上げると一気に走り去る。
意気揚々と帰ってくるチャトーラの姿を見て、タマーリンは臍を噬む。
「あのバカ、ミケラ様を使って・・・」
ミケラを使ってチャトーラは武茶志を先に走らせて技量を測ったのだ。
「戻ったぜぇぇぇぇ」
雄叫びと供にチャトーラはゴールの線を走る抜ける。
「兄ちゃんやったぁぁぁぁぁ」
「やった、やった」
ミケラとチャトーミは手を取り合って大喜びする。
「パラライズ」
タマーリンの放ったパラライズがチャトーラに直撃し、
「うぎゃぁぁぁぁぁ!」
チャトーラはその場でのたうち回った
訳が判らずミケラとチャトーミはタマーリンとチャトーラを交互に見る。
「安心して下さいミケラ様、これはチャトーラに頼まれてやった事ですから。一番にゴールしたらパラライズを討って欲しいと、多分、そんな趣味がござますのでしょうね。オ~ホッホッホッホッホッ」
高笑いするタマーリン。
「趣味なの兄ちゃん?」
「ちげぇぇ」
チャトーラはそれだけ絞り出して、再びのたうち回る。
「はいはい、次は剣術ですわね、準備は宜しい?」
戻ってきたばかりの武茶志にタマーリンが聞く。
のたうち回るチャトーラを見て引きつった表情を浮かべる武茶志は、
「す、少し休ませて下さい。二回も走った後なので」
タマーリンはしばし考えて、
「それもそうですわね、少し休憩を入れましょうか。虎次郎も疲れていたから負けたと言われるのも不本意でしょうから」
それを聞いて武茶志はホッとした。
「ありがとうございます、助かります」
武茶志はタマーリンに頭を下げ、敷物の方にトボトボと歩き始めた。
「武茶志、疲れてるの?」
ミケラがチャトーミの顔を見上げた。
「そうだね、二回も続けて走ったから・・・そうだ、姫様が誉めたら元気が出るかも」
「誉める・・・武茶志を?」
ミケラは困った顔をしてチャトーミの顔を見上げた。
どう誉めればいいか判らないのだ。
「そうだね、そうそう、二回も走ったのを誉めるのはどうかな。頑張って二回も走ったのはすごく大変なんだよ、それは誉められてもいい事だよ」
言われてミケラの顔が明るくなった。
「武茶志、凄いんだ」
「うん、凄い、凄い」
ミケラは武茶志に向かってトコトコと走り出す。
「武茶志、武茶志」
呼び止められて、武茶志は振り返る。
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