外伝1「さすらいの勇者1ー123」
やがて虎次郎の持つ刀の表面が赤く染まり、炎に包まれる。
その炎は刀から虎次郎の身体に移り、瞬く間に虎次郎の身体が炎に包まれた。
封印が解かれるまでの間、キマシの作った沼に魔獣が次々と落ちていき、虎次郎を守る役目を果たしたのだ。
虎次郎が目の前で燃え上がり、その場にいた人間はぎょっとする。
「虎次郎が燃えているぞ!」
「水、水。誰か水を持ってくるのじゃ!」
あたふたとするチェンとドン。
「心配ない、この刀の力を解放しただけだ」
何事も無いと言いきる虎次郎。
そればかりか、
「邪魔だ、お前達はさっさと逃げろ」
と言い切る。
「に、逃げろって言われてもな」
後ろは魔獣が暴れ回り混乱しているのだ、逃げろと言われても逃げようがない。
「俺が隙を作る」
そう言って虎次郎は刀を振るい、炎の刃を三方に放つ。
その刃の直撃を受けた魔獣の身体は瞬時に焼かれ、骨しか残さず果て、掠めただけで魔獣の身体を覆う毛が燃え上がり炎に包まれる。
森に引火してはまずいと考えたのか、森のかなり手前で消えてしまったが、今の攻撃だけで魔獣の数がかなり減った。
「今だ、撤退するぞ」
チャンスと見て、チェンが叫ぶ。
チェンの合図と共に、防御態勢を維持しつつ下がる。
チェン達が後退している間、虎次郎は刀を振るい続けて、魔獣の数を減らす。
更にタマーリンの爆撃によって魔獣の進行が途絶えたのを幸いに、虎次郎から離れた場所で防御態勢を整え直す。
「虎次郎に中央は任せて、俺たちは両側を守るぞ」
虎次郎の戦い方を見て、森側の攻撃を避けているのを見て取ったチェンは、森側から抜けてくる魔獣の迎撃に切り替えたのだ。
「サビエラさ~~~ん」
雄叫びと共に砦に向かって走っている自分に武茶士は気がつく。
「あれ、俺は森の木の下にいたんじゃ?」
と思ったが、
「時間を止めたって言っていたから、あの二人ならこれくらい出来るか」
ミケラとサクラーノの姿をした謎の存在ならこれくらい出来ると、自分を納得させる。
「それよりなんだこの速さは、虎次郎の瞬歩より速くないか?」
信じられない速さで走っている自分に驚くと共に、この速さで走りながらまるで疲れを感じないのにも驚く。
途中でレッドベルを追い抜き、瞬く間に砦の門の前まで着いてしまう。
砦の門の向こうに首を失った大猿が倒れているのが見えた。
「誰がやったんだ?」
と驚きながらも、
「そんな事よりサビエラさんを助けに行かないと」
門をくぐり抜ける、オオカミ型と戦っている兵士の頭の上を跳び越えた。
跳び越えたのだが・・・自分では軽く飛び越えたはずがとんでもない距離を跳んでしまい、
「うぉぉぉぉぉ、ぶつかるぅぅぅぅ!」
武茶士の悲鳴と共に、虹の柱の立っている食堂の壁に突っ込んでいった。
後書きで
ネビュラ・ナナ様がやっと登場です。
と言っても、出番はこれでお終いなんですが。
おっと、ネタばれしちまったぜ。
ミケラたちと絡む短編は考えてはいるんですが、まだ練りが足りない感じがして何時になるやら。
気長にお待ちいただければ年内には何とかします。
ではまた来週(@^^)/~~~
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