外伝1「さすらいの勇者1ー117」
何度殴りかかっても攻撃が当たらず、業を煮やした大猿はクロウベルに向かって大咆哮を浴びせかけた。
両手が塞がっていたクロウベルは咄嗟に耳が塞ぐ事ができずに、その咆哮をもらに喰らってしまう。
剣を落としその場にうずくまるクロウベル。
「油断しすぎだぞ」
ジークがクロウベルの襟首を掴み、後ろに引きずり倒す。
そこへ大猿が今までクロウベルのいた場所に攻撃してきた。
大猿の攻撃は、クロウベルの身体を僅かにかすめただけで空振りに終わる。
ジークがクロウベルを後ろに放り投げると、駆けつけた兵士が連れて行った。
「さてと、今度は俺とやろうぜ」
ゆらりと大猿の前に立つジーク。
「言っておくが、俺はクロウベル程優しくない・・・」
ジークの言葉が終わらないうちに、大猿は腕を振り回してジークに襲いかかる。
その攻撃を大剣を使い全て弾き返すジーク。
その弾き返しが強烈で、大猿の手は見る間に血だらけになってしまったのだ。
「どうした、お前さんはその程度か」
不敵に笑うジーク。
そのジークに大咆哮を浴びせかける大猿。
「おっと、その手は食わないぜ」
その大咆哮も大剣を使って防ぐ。
「どうした、もっと俺と遊ぼうぜ」
余裕を見せるジークだったが、その余裕が一気になくなってしまう。
大猿の壊した門からオオカミ型が砦内に入り出したからだ。
「おっと、これはまずいな」
真剣な表情に変わると、
「悪いが遊びの時間は終わりだ」
ジークの身体が揺らめいた瞬間、大猿の右の太ももから血が噴き出す。
右足から力が抜け、倒れそうになった身体を支えようと大猿の身体が前のめりになる。
既にジークは大猿の下に潜り込んでいた。
「これで終いだ」
前のめりなり下がった大猿の首を、ジークの大剣が薙いだ。
首を失い大猿はそのまま動かなくなる。
「さてと」
振り向くジーク。
オオカミ型はジークを追って来た槍兵と弓兵が相手をしていたが、動きの素早いオオカミ型に攻撃が当たらず、苦戦を強いられていた。
「くそっ、俺もあいつら苦手だって言うのに」
ちょこまかと動くオオカミ型にジークの持つ大剣は相性が悪いのだ。
しかもオオカミ型は連携して動くので、タイマン勝負を得意とするジークは苦手意識を持っていた。
苦手意識を持ちながらもなんとかオオカミ型を屠っていくジークであったが、オオカミ型の侵入の方が遙かに多く、ついに広場の方へ通してしまう。
「これはまずいな」
渋い顔になるジーク。
時間は少し巻き戻る。
ジークが大猿と対峙し、オオカミ型が塔の中に侵入し始めた頃。
魔法投影機でその様子を見ていた副官は、
「非戦闘員は大至急食堂に待避」
と叫んだ。
「あなた方も急いで待避して下さい」
一つ目ちゃんを制御している魔法使い達に声をかける。
「わたし達は一つ目ちゃんを安全な場所に着陸させてから行きます、先に行って下さい」
いきなり制御を切れば一つ目ちゃんは墜落してしまう。
一つ目ちゃんは魔道研の大切な財産であり、所長であるモモエルがとても大事にしているのだ。
制御を切って墜落させましたなんて言ったら、絶対においおいと目の前で泣かれる。
それだけは避けなければならない、それは魔道研内の暗黙のルールだったのだ。
「判りました、急いで来て下さいね」
サビエラはそう声をかけると、魔法道具研究所から来たスタッフ達と共に食堂を目指して走った。
後書きです
今日は、早々と投稿。
褒めて、褒めて。
僕は褒められると伸びる子なのでw
今週はまじめに小説書いてました。
止まっている「ナイト・クラン・ウォー」の方もぼちぼちと続き書き始めたし。
来週はもっといろいろ書けるといいな。
ではまた来週(@^^)/~~~
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