外伝1「さすらいの勇者1ー105」
「そうだ、おやつ。ギリとキマシの分、わたしのと一緒に食堂のおばちゃんに取っておいて貰ってある」
レッドベルがおやつの事を口にすると、
「おやつ!食べる!」
泣いていたキマシの機嫌が一瞬で良くなる。
「じゃ、行くぞ」
レッドベルが先頭に立って走り出す。
「待ってよベル」
「ベル、速いって」
キマシとギリがレッドベルに続いて走り出した。
おやつを食べてキマシが落ち着いき、ようやくまともに話が出来るようになった。
夕食を食べながら話を聞く。
しばらくキマシが、シルフィーナとタマーリンの鬼畜ぶりを早口でまくし立てた後、
「それで、特訓の成果であたしがナイフを投げた所に、キマシが沼を二つ作れるようになったから。あたしの投げたナイフの方には行かないでよ」
ギリが説明をする。
「そうか、一度に二つ沼作れるようになったのか、よくやったキマシ」
チェンがキマシを誉める。
「えへへへへ」
笑いながら、キマシはギリとレッドベルにしか見えないように親指を立てる。
ギリもレッドベルもこっそりと親指を立てて返す。
「それで、何回その魔術は使える?」
「飴舐めながらなら、十回かな」
しばらく腕を組んで考えていたチェンは、
「それで充分か。キマシ、最初にこんな感じで俺たちの前に沼を作ってくれ」
カップを少しずらす感じで三つ、縦に並べる。
「これで、魔獣の出鼻をかなり挫けるからな」
ギリがカップを見ながら、
「位置取りは、あたしに任せて貰っていい?」
「おう、任せた」
最初の沼の位置はギリに一任される。
チェンがギリの事を信頼している証だ。
「やったね、ギリ」
キマシが小声で話し掛ける。
「うん」
ギリもニコッと笑う。
「じゃ、キマシ。あたしの投げたナイフだけ見てればいいからね。魔獣なんて見たら怖くて動けなくなるから、判った?」
実際、前線に出れば魔獣を見るななんて無理な話なのだが、出来る限り意識を自分に向けさせて恐怖を紛らせて貰う作戦だった。
「うん、判った」
キマシも軽やかに返事をする。
「こいつ、本当に判ってんのか?」
その返事があまりにも軽すぎたので、少し心配になるギリだった。
「さてと、明日の作戦はこんなもんかな?」
夕食を食べ終わった後、その場に残って明日の作戦が話し合われた。
まず、キマシの沼魔術で魔獣を沼に落として直ぐ解除。
沼に落ちた魔獣はそのまま土に埋まる。
次に虎次郎が飛び出して、魔獣を蹴散らす。
その後方支援として武茶士が出て、虎次郎を後ろから支え、捌ききれなくなってきたら一旦、後方に引き下がってチェンとドンに任せる。
チェンとドンが盾でガードし、モリノクが身体強化と回復を担当。
盾で防いでいる間に、キマシの作る沼に魔獣を落とし、その隙に再び虎次郎と無茶士が前に出て魔獣を蹴散らす。
サンチョとヒットはもしも魔獣が抜けてきた場合に備え、キマシとモリノクの護衛に付く事となった。
その方針で守り切る作戦だ。
作戦としては申し分のない作戦だった。
ただ、虎次郎も武茶士も優秀過ぎた。
優秀過ぎた所以に思わぬ落とし穴にはまる事になったのだ。
後書きです
ドラゴンズ ドラグマ2 やっと終わりました。
スフィンクスのクエスト大変でした。
それ以上に顔怖い、本気で夢に出てきたらうなされるレベル。
逃したクエストがいくつかあるんですが、二周目をやる気は起きないです。
面白過ぎて創作の方に打ち込めなくなるので(^^)/
この話も気が付けば百話越え、予定通りいけば百三十話前後で終ります。
次から本編に戻るんですが、話がまとまりきってない困った。
ではまた来週(@^^)/~~~
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