転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その14
言い終わると同時にチャトーミの身体がぶれた。
それも一瞬だけで、次の瞬間にはチャトーミが三人に増えたのだ。
「わっ、わっ、すご~い!」
ミケラが手を叩きながら大声で歓声を上げて喜ぶ。
「な、な、な、なんだこれ、チャトーミが三人に増えたぁぁぁぁ」
「凄いじゃん、奇跡じゃん」
「四露死苦、四露死苦」
小妖精達が目を丸くして驚く。
「もう無理」
唐突に三人だったチャトーミが一人の戻り、ゼェゼェ荒い息をしながら前向きに地面に手を着く。
「向こうの木まで走ってなかったらもう少し出来たんだけど、流石に限界。ちょっとしか出来なくて、ごめんね姫様」
チャトーミはミケラに謝ったが、
「そんな事無いよ、チャトーミ凄かったよ」
ミケラは目をキラキラさせてチャトーミを誉める。
キラキラするミケラの目を見てチャトーミはホッとすると供に、身体の疲れが癒やされていくように軽くなった気がした。
「ありがとう姫様、姫様に喜んで貰ったらなんだか元気出た」
地面に手を着いて荒い息をしていたチャトーミが立ち上がる。
「ホントに姫様に誉めて貰ったら疲れが飛んじゃった、ありがと姫様」
チャトーミはミケラに抱きつく。
ミケラはキャッと声を出して喜ぶ。
「そうだ、今は三人にまでしかなれないけど、練習してもっと凄いのを出来るようになるから、楽しみにしてね」
「ほんと?」
「ほんと、ほんと」
チャトーミとミケラは手を繋いで楽しそうに踊り始めた。
楽しく踊るチャトーミとミケラに白い玉を持ったチャトーラが近寄る。
「チャトーミ、元気になったか。じゃ、この玉また置いてきて・・・」
チャトーラが話し終わる前にチャトーミが頭をスパコ~ンと張り倒す。
「いてぇな」
「いてぇなじゃ無いよ、あたしは疲れてるんだよ。また行ってこいなんて普通言うか兄ちゃん?」
チャトーラはチャトーミに殴られたところをさすりながら、
「今、元気そうに姫様と踊ってたじゃんか」
「姫様と踊るのと向こうの木まで走るのとじゃ、疲れ方が違うでしょが」
怒ったチャトーミがまた拳を振り上げたので、チャトーラは「わ、悪かったよ」と謝りながら頭をガードする。
「チャトーラもチャトーミみたいに何人にもなれるの?」
ミケラに聞かれたチャトーラは、
「無理、あれはチャトーミだから出来るんだ。チャトーミは身体が軽いから、止まったり走ったりの繰り返しが俺は苦手だし」
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