表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
369/589

外伝1「さすらいの勇者1ー104」

 おやつの頃になってチェンは帰ってきた。

「で、どうじゃった?」

 ドンに聞かれてチェンは渋い顔をする。

「第一陣、中央に出撃が決まった」

 ドンはチェンが渋い顔をしている理由を理解した。

「そうか、厳しいのう」

 ドンの表情も厳しくなった。

「どういうこと?」

 無茶士は二人が厳しい顔をしている理由がわからず、ヒットに聞く。

「対魔獣戦では、空中から最初に魔術師が魔術攻撃をして数を減らします。その後、森に潜むエルフ達が左右から矢を射かけて数を減すのですよ。そのお陰で左右の魔獣の数は減るんですが、矢の届き難い中央はあまり減らないので、大量の魔獣が押し寄せてくるんですよね」

 しかも第一陣となれば、大量の魔獣に対して最初に相手をしなければならない。

 二人の表情が厳しくなるのも当然だ。

「でも、うちの隊は武茶士やキマシ、モリノクは初陣ですよ。初陣三人も抱えてるのに、いきなり第一陣中央は無理じゃないですか」

 温厚なヒットにしては珍しく、言葉が少し強めだった。

 それだけ危険な場所なのだ。

「判ってるって。俺だって無理だって言ったんだよ・・・でもよ、魔術隊の総隊長のシルフィーナが強引に決めちまいやがってよ、あの女狐が」

 チェンは怒りを抑えるように握った拳に力が入る。




 少し離れた場所でやりとりを聞いていた虎次郎は、

「白炎、お前の力が必要になるかもしれぬ」

 ぼそっと呟く。

「御意」

 どこからともなく、人の声とは思えない返事が返ってきた。




 午後の訓練が終わる頃、ギリとキマシが帰ってきた。

「エッグ、エッグ」

「ほら泣くなよ、部隊に付いたんだから、もう大丈夫だからさ」

 泣きじゃくるキマシの肩を、ギリが抱き締めて帰ってきたのだ。

「キマシ、誰に泣かされた?わたしがぶん殴ってきてやる」

 はやるレッドベルを、

「ベル違うの、虐められたわけじゃないから」

 落ち着かせようとするギリ。

「シルフィーナさん怖い、タマーリンさん怖い」

 怯えるようなキマシの呟きを聞いて、武茶士は大方の予想が付いた。

「二人にしごかれたのか?」

「うん」

 頷くギリ。

「鬼よ、二人とも鬼よ!人の皮を被った鬼よ!」

 キマシが絶叫する。

「作戦会議から帰ってきたシルフィーナさんにこってりと絞られたの、それにタマーリンさんも一緒になって地獄の大特訓が始まって・・・」

 それを聞いて、一人納得する武茶士。

 タマーリンとシルフィーナは間違いなく同類だ。

 エルフで年齢を重ねている分、シルフィーナの方がタマーリンよりたちが悪い。

 その二人にしごかれたのだから、キマシが泣いて帰ってくるのも頷けるのだった。


                       (Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ