表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
362/589

外伝1「さすらいの勇者1ー97」

 食事も終わり、デザートを食べててほっとしていると、

「食べ終わったらさっさと席を空けて、あなた達がいると他の人が入って来れないから。ほら、あれ」

 シルフィーナの指さす入り口の方を見ると、恐る恐る様子を見に来た魔術師がタマーリンの姿を見た途端に逃げていく姿が見えた。

「そうですね、もう終わったなら退散しましょうか」

「ですね、迷惑みたいだし」

 サビエラと無茶士が立ち上がる。

「あら、気にしなくて宜しいのよ。もっとゆっくりとすれば良いのですわ」

 タマーリンは立ち上がるどころか、更に居座る気満々だった。

「あなたが一番の問題でしょ、さっさと出て行く」

「そんな先生、つれないですわ」

 と言いながら、やおら立ち上がると、

「あなた達も行きますわよ」

 様子を見ていたギリ達に声をかける。

「どうする?」

「武茶士達がいないのに残っても仕方ない」

「そうだ、チュウを見られないじゃないか」

 ひそひそと話し合ってから、

「行きます」

 三人は立ち上がりタマーリンに続く。

 武茶士達も三人の後に続き、タマーリンが先頭になって進む事になる。

 入り口を抜け廊下に出ると、食堂に入りたくても入れずにたむろしていた魔術師達がタマーリンの姿を見ると一斉に廊下の両側に直立不動で立ち並んだ。

「お見送りご苦労様」

 タマーリンは平然とした顔でその間を歩く。

 その後ろを歩くキマシとレッドベルは、

「どうも、どうも」

「お世話になりました」

 脳天気に手を振って愛想を振りまく。

 二人の間にいるギリは気まずそうに下を向いて歩いた。




「しっかり前を向いて歩いて下さい。タマーリン様と一緒にいると、こんな事いつもの事ですから」

 サビエラが武茶士にささやきかける。

「ああ、判ってますとも」

 武茶士とサビエラは両側に人が並ぶ廊下の真ん中を、手を繋ぎ毅然きぜんとして進む。

 やがて廊下を抜け、人がいなくなる所まで出ると、

「だぁぁぁ」

 一気に緊張を抜く武茶士。

「あはははは」

 隣でサビエラも苦笑いする。





「はいはい、皆さんお疲れ様でした」

 タマーリンが手を叩き、みなの視線を集める。

「今日はこれで解散ですわ、もうお帰りなさい」

 と言いつつ、サビエラにこっそり目配せした。

「そうね、明日も忙しいから早く帰って明日の仕度しなくちゃ」

 わざとらしいくらいに大声を出しながら、タマーリンの方をチラッと見る。

「あなた達もお帰りなさい、明日も訓練があるのでしょ?」

 ギリ達三人に声をかける。

「でも・・・」

 三人はどうしようかと顔を見合わせる。

 ギリ達がなかなか動かないので、

「あっ、いけない。大事なモノを作業現場に忘れて来ちゃった!」

 更にわざとらしい声を上げてからサビエラは、外の様子を見る。

 日が落ち、外は暗くなり始めていた。

 人通りもなく、魔法街灯のスイッチを入れて歩く用務員くらいしか見当たらない。

 サビエラは武茶士の方を見た。

「もう暗いから、俺が一緒に行きますよ」

 サビエラの顔がぱっと明るくなり、タマーリンも満足そうに頷く。

「それじゃ、わたし達・・・」

 何かを言いかけた三人が、突然固まって動けなくなった。

 ほぼ無詠唱レベルでタマーリンがバインドを使って三人を拘束したのだ。

 ドラゴンですら一時間は拘束出来るタマーリンのバインドに、並の人間が抵抗出来るはずもない。

 何が起こったか察したサビエラは、

「ありがとうございます」

 タマーリンに頭を下げ、武茶士と手を繋ぎ街灯の明かりの向こうへと消えていった。


                        (Copyright2024-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ