転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その13
「ぜぇえ、ぜぇえ、ぜぇえ、な、何だったんですか今のは」
武茶志が戻ってきた。
「お帰りなさい」
クロが出迎える。
「あれはお姫様のタレントの影渡りです」
「影渡り?」
「影から影へ移動出来るんですよ、渡るには色々と条件が有りますが面白いでしょ?」
クロは笑う。
「面白いと言うより驚きました、タレントって何でも有りなんですね」
「そうですね、役に立つモノから面白いモノまで、本当に千差万別有りますね」
武茶志は「そうなんですか」と感心する。
そこへミケラがトコトコと走ってきて、
「ごめんなさい、これ取って来たら武茶志が喜ぶってチャトーラが言ったから」
白い玉を差し出して頭をちょこんと下げて謝る。
「ミケラ様が謝る必要はありませんわ、全てこのバカが悪いのですから」
タマーリンがビシッとチャトーラを指差す。
「兄ちゃんを許してやって、あたしがきっちりお仕置きしておいたから」
「す、すまねえ・・・」
庇うチャトーミの後ろでチャトーラがヘコヘコと謝る。
「そうなの?」
武茶志がクロに尋ねる。
「はい、チャトーミさんのそれは見事なラリアットが決まりまして・・・それにしてもチャトーミさん速かったですね」
クロが感心してチャトーミを誉める。
「やだクロったら、あたしそんなに速くないよ」
チャトーミが照れて顔を赤くした。
「チャトーミが速いのは最初の一歩だけだけどな。まっ、最初の一歩だけなら旦那より速いかもな」
「兄ちゃんやめてよ、旦那が変な目であたし見てるよ」
虎次郎がライバル心丸出しでチャトーミを睨んでいた。
「旦那、大丈夫ですよ。チャトーミが速いのは本当に最初の一歩だけなんで、旦那の瞬歩の方がよっぽど凄いですから」
チャトーラが誉めると、当然だと大きく頷いてニマニマと笑みを浮かべる虎次郎。
「やっぱあいつチョロいぞ」
「チョロ次郎じゃん」
「チョロ死苦」
虎次郎に聞こえないようにヒソヒソと囁きあう小妖精達。
「そうだチャトーミ、姫様にあれやって見せろよ」
「あれって、あれのこと?」
「そうだよ、あれだよ」
チャトーラの言葉に、チャトーミは頬を膨らませる。
「やだよ、あたし向こうの木まで走ってきたばかりで疲れてるんだよ。あれは、もの凄く疲れるんだからね」
しかし、そんなチャトーミの言葉にチャトーラはなだめるように笑う。
「きっと姫様も喜ぶからさ、なっ、いいだろ」
「もう、兄ちゃんいつもそうだから・・・やるよ、やればいいんでしょ」
チャトーミは観念してぶっきらぼうに返事をする。
「姫様、お詫びにチャトーミが面白い物見せるから」
「面白い物!」
面白い物と言われ、ミケラが目をキラキラさせて食いついてきた。
「じゃ、ちょっと離れてね」
チャトーラがミケラの手を引いてチャトーミから離れる。
その間にチャトーミはその場で軽く何度か跳ねる。
クロやタマーリン、小妖精達も何が始まるのかと興味を引かれ集まり始めた。
「じゃあ、やるよ。よく見ていてね」
(Copyright2022-© 入沙界 南兎)