外伝1「さすらいの勇者1ー91」
「いい、武茶士もサビエラ姉さんも超奥手だから。二人だけにしたらろくに話もしないで、ご飯食べて帰ってくるぞ」
「そだよね、武茶士なんて背中押してやんないと、折角のチャンスが目の前に有っても動かないよね」
キマシがやれやれと溜め息をつく。
「でも、さっきのキマシのアドバイスは良かったぞ」
「ふふん、当然。この恋愛ハンターキマシ様にかかれば、武茶士なんて赤子の手を捻るより簡単だよ」
胸を張り、ふんぞり返るキマシ。
「その割に、彼氏いないよね」
「ぐっ・・・ギリだっていないじゃない」
この場にいる三人とも、彼氏いない歴=年齢なのだった。
「彼氏って、どうやって作るんだろう」
恋愛ハンター(自称)のキマシは腕を組んで悩む。
「やっぱあれじゃないか、目当ての男を見つけたら人気の無い所行くのを待って、後ろから近寄って殴り倒して連れてくるとか」
「おおっ、その手が有ったか」
レッドベルの案に手を打つキマシ。
「やめい、それは犯罪だから」
ギリにグーで頭を殴られるキマシとレッドベル。
「兎に角、二人だけにするのはダメ。わたし達で応援しないと」
「そうだよ、二人だけにしたらいつまで経ってもチュウしないからね」
「チュ、チュウと申しますと・・・あ、あのチュウの、事でしょうかキマシ先生!」
チュウと聞いてやたら興奮気味になるレッドベル。
「いい質問だねベル君。そう、君の思っているそのチュウの事だよ」
「えへ、えへへへへ」
レッドベルは、その場面を妄想してヨダレを垂らす。
「と言う事で」
「武茶士とサビエラ姉さんを応援に行くぞぉぉぉ」
互いに顔を見つめ合い頷く三人。
「行くぞ!」
「お~~っ!」
「二人のチュウのために頑張ろう!」
こうして武茶士の尾行は始まったのだった。
ギリは武茶士に気取られないように巧みに尾行を続け、待ち合わせの場所まで来た。
既にサビエラが来ているのも見える。
辺りを見回し、武茶士の方からは見え難く、自分の方からはよく見える場所を見つけ身を潜めた。
流石に斥候である、そんな場所を見つけるのは得意なのだ。
「こっち、こっち」
自分の後を追ってきた、キマシとレッドベルに合図を送り呼び寄せる。
「なんか、サビエラ姉さん気合い入ってない?」
「お化粧してるよね」
「それだけこのデートにかけてるって事かな?」
サビエラとはまだ短い付き合いだが、明らかにいつもと違う雰囲気が見て取れる。
「サビエラ姉さんがあんなに頑張ってるんだから、あたい達もしっかり応援するよ」
「うん、武茶士はボンクラだから一人じゃ何も出来ないからね」
「二人のチュウのために頑張るぞ」
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