転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その12
チャトーラはそれでものんびりとし、ミケラの方を見ると軽く手を上げる。
それを見て、ミケラの身体は日傘の影の中に沈み、チャトーミが白い玉を置いた木の影から出た。
「あった、これだ」
ミケラは置いてあった白い玉を手に取ると再び影に潜り込む。
「チャトーラ取って来たよ」
日傘の影の中から飛び出してきたミケラが白い玉を持った腕を上げる。
場が凍り付いた。
時間が止まったようにその場にいた者達全員の動きが止まる。
最初に動いたのはチャトーミだった。
「にぃぃぃぃぃぃちゃぁぁぁぁんのバカァァァァァァァァァァ!」
手加減なし最速のラリアットがチャトーラの首に炸裂した。
チャトーラの身体が剛速球投手が投げた玉のようにすっ飛び、
「ゲブ」
「グフ」
「グァ」
地面で何度かバウンドした後、更に数メートル地面を転がると、先回りしたチャトーミの足下で止まる。
「兄ちゃん生きてる?」
「ゲホゴホゲホ」
取りあえず生きているようだった。
「一瞬、本気で兄ちゃんと兄妹の縁、切ろうかと思ったよ。世の中、やって良い事と悪い事あんだよ、判ってる?」
チャトーミが睨むとチャトーラは苦しそうに喉を押さえながらコクコクと頷く。
「姫様に悪い事させちゃダメでしょ、あたしも怒ってるんだからね」
チャトーラはチャトーミに向かって手を合わせた。
「もうしょうがないな、でも旦那とタマーリンがぶち切れるよね・・・どうしよう?」
チャトーミは考えたが、
「考えてもしょうがないかあたし頭悪いし、一緒に謝ってあげるから兄ちゃんも本気でしっかり謝りなよ」
チャトーラに手を貸して立ち上がらせると、皆のところに戻る。
「申し訳ありませんでした!」
戻るなりチャトーラは地面に額がめり込むほどの見事な土下座をする。
「済みません、済みません。兄ちゃんには二度とバカな真似はさせませんから、許して下さい」
チャトーミも一緒に何度も頭を下げる。
「なんでチャトーラとチャトーミが謝っているの?・・・もしかしてこれ持ってきちゃダメだった?」
ミケラが手にした白い玉を困ったように見つめる。
「ミケラ様は何も悪くないですわ、悪いのは全てあのバカですから」
タマーリンは安心させるようにミケラの頭を撫でてから、土下座をするチャトーラの前に立つと、
「自分が何をしでかしたか判っているようですわね、わたくしのはらわたは煮えくりかえっていますのよ」
かなり厳しい表情をしていたタマーリンの表情が緩む、
「でも許して差し上げます。チャトーミに感謝なさい、チャトーミのラリアットで毒気が抜けてしまいましたわ」
虎次郎もウンウンと頷く。
それを聞いてチャトーミはホッと息をつく。
「兄ちゃんもういいよ」
土下座しているチャトーラを止めた。
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