外伝1「さすらいの勇者1ー69」
虎次郎は空になったおひつをじっと見つめていた。
無茶士の方は、
「ご飯が・・・ご飯が・・・消えてしまう・・・」
うわごとを呟きながら、魂が抜けたように三人娘が飯を食べる様をホゲッと見ていた。
二人の目の前で三人はパクパクとご飯を食べていく。
「しっかりとしろ無茶士、米はまた炊けば良いだけの話だ」
その言葉に無茶士は我に返る。
「そうですよね、また炊けば良いんですよね」
と息を吹き返す。
「ところでこちらではどうやってお米を炊くんですか?」
昨日、虎次郎に炊いたご飯を少し貰ってからその事が気になっていたのだ。
「これを使う」
虎次郎は布製の袋の中から取っ手の付いた丸い金属製の筒のようなモノを出した。
「見せて貰ってもいいですか?」
「かまわぬ」
虎次郎はぶっきらぼうに筒を無茶士に突き出す。
「では拝見させて頂きます」
受け取ると無茶士は筒を上や下からじっくり見た後、筒の上の蓋を開ける為に上に引っ張ってみた。
ほどよい抵抗の後、蓋は取れる。
「加工精度は良いみたいですね」
機械系の営業をやっていたので、加工精度がつい気になってしまう。
蓋を開けると中蓋があった。
「あれ?・・・これどこかで見た事があるような・・・そうか、飯盒だ、これは飯盒だ・・・異世界にも飯盒が有るんだな」
感激する無茶士。
子供の頃、夏休みに家族でキャンプに行った時に父親が飯盒を使ってご飯を炊いて見せてくれたのだ。
その後、父親に習いながら初めて飯盒でご飯を炊き、焦がしてしまったのは良い思い出だった。
「父さん、母さん・・・俺、急に死んでしまって御免」
家族の顔を思い出し、無茶士は急にしんみりとしてしまう。
「どうした?」
無茶士の様子が気になったのか虎次郎が声をかけてきた。
「いえ、なんでもないです」
無茶士は無理に笑ってみせる。
「そうか」
虎次郎はそれ以上何も聞いてこない。
「そうそう、これと似たのを俺、子供の頃使った事が有ります。今度、俺が炊きますよ」
「今度は無茶士が作ってくれるのか?」
「ありがとう無茶士」
「流石勇者様、ありがとう」
食べ終わった三人娘達が今の話を聞いていたのだ。
「えっ、ええっ!」
思わぬ展開に驚きの声を上げる無茶士。
そんあ無茶士の驚きは無視され、虎次郎の持ってきたお米は全て三人娘に食い尽くされる事になったのであった。
後書きです
ここのところ、レッドベル中心に話が進んでますね。
主役、あれ、誰だったかな?
武茶士君がすごい顔でにらんでいるので、冗談はこの変にしておいて。
レッドベルは書きやすいですね、話が詰まったときはとりあえずレッドベルを出しておくと話が進むのでつい使ってしまいます。
レッドベルの出番多い、作者が話に詰まったと思っていただければ(笑)
ではまた来週(@^^)/~~~
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