外伝1「さすらいの勇者1ー66」
「でも、本当にここの食事は美味しいな、うちの隊舎の食堂も美味しいけどここに比べたら落ちるぞ」
「あら、嬉しい事言ってくれるね」
夕べ、夜食を届けてくれた食堂のおばちゃんが声をかけてきた。
「あっ、夕べはありがとうございました」
「いいってことさ」
おばちゃんは軽く手を振る。
「それよりお嬢ちゃん、あんたはどこの隊舎から来たんだい」
「一番隊舎だよ」
明るく元気に答えるレッドベル。
隊舎は一番から五番まであり、武茶士達のいるのは四番隊舎だった。
「ここは獣人やエルフやドワーフが多いから、食材も他の隊舎より種類が多いからね。その分、他の隊舎じゃ出せない味が出るのさ」
「そうなんだ・・・でも、なんでここは獣人やエルフさんが多いのだ?」
空気を読めない直球ど真ん中の質問をレッドベルはする。
「人間の中には獣人を差別する奴がいるからさ」
おばちゃんの方も歯に衣を着せる答えを、笑いながらする。
「差別ってなんでだ、獣人だろうが何だろうが一緒に戦う仲間なのに」
レッドベルは本気で訳が判らないという顔した。
「タマーリン、起きている?」
シルフィーナはタマーリンの部屋のドアをノックする。
「ええ、起きてましてよ。お入りになって下さい、先生」
部屋に入るとタマーリンは寝間着のままベッドに腰掛けていた。
「無理しなくていいのよ、もう少し寝ていなさい」
「ありがとうございます先生。もうだいぶ良くなってきていますから」
笑うタマーリンの横にシルフィーナは腰掛ける。
「もうあんな無茶しないでね。魔力切れ起こして倒れそうなのに、あの子達に付き合うとか」
タマーリンは船の上で魔力切れを起こしていたのだ。
普通なら魔力切れを起こして時点で気を失ってしまうのだが、タマーリンは平然な顔をしてキマシ達に付き合っていた。
「うふふふ、無茶士に弱みなんて見せたらわたくしの沽券に関わりますもの」
「まったく、変な所で意地っ張りなのは子供の頃から変わらないのね」
シルフィーナは諦めたように笑う。
「兎に角、今日一日しっかり休んで魔力を回復しなさいね」
タマーリンは巨大な魔力に支えられ、超強力な魔法を自在に操れるが、魔力の回復がそれに追いつかないのだった。
魔力回復飴やポーションの類いもタマーリンの魔力量の前には焼け石に水でしかない。
タマーリンが砦からの招致を拒否していたのもそれが本当の理由なのだ。
「あなたは本当の本当に最後の頼みなんだから、その時が来るまでしっかり魔力を温存しておいてね」
「判っていますわ、サビエラや魔道研の技術者は誰一人犠牲を出させませんわよ」
それが今回、タマーリンが砦まで来た真の目的だったのだ。
後書きです
今週も無事、投稿できて良かった。
やばかったです、土曜日にちょっとお試しにと始めたゲームにドはまりして、時間が溶ける溶ける。
サバイバル系のストラテージはダメ人間力が上がるから封印すべきかも。
封印できるものならとっくにしているけど(笑)
ではまた来週(@^^)/~~~
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