転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その10
「この人達と一緒にいて怖くないですか?」
と武茶志はクロに尋ねた。
「お姫様と一緒にいると楽しいですよ。僕も含めて皆さんもお姫様大好きですから」
クロは笑いながら答えた。
「そうなんですか」
「あなたもお姫様と一緒にいればそのうち判りますよ」
クロに言われ、武茶志は考える。
「言われれば最初に会った時に、挨拶をしようと言ったのはあの子だった。困っている人を助けようと言い出したのもあの子だったよな」
ミケラの方に視線を向ける。
ミケラの周りで皆が楽しそうに笑っているのが目に入る。
「あの子の周りで皆楽しそうに笑っている、不思議な子だ・・・・・・しばらく一緒にいてみるかな」
そう決めた武茶志はミケラの方へ走る。
「それでは競技の種目も出尽くしたようなので始めましょうか」
その後、いくつか競技が追加され、最後にタマーリンが閉めた。
「ちょい待った」
チャトーラが待ったをかける。
「何なんですの?」
「姫様の座る場所作ろうと思ってさ」
「それもそうですわね、ミケラ様を立たせたままというわけにも行きませんから」
タマーリンも納得する。
「ちょっくら作るから、皆も手伝ってくれ」
チャトーラは背負っていた荷物の中から携行用の敷物を取り出す。
「これをそこに敷こうか」
と場所を指し、皆で広げて敷いた。
「これは姫様用」
小さな椅子をチャトーミが自分のバッグから取り出し、広げた敷物の上に置く。
「さっ、姫様。座って、座って」
チャトーミに背中を押され、ミケラは置かれた椅子に座る。
「ねぇ、お皿無い?」
ミミが聞いてきた。
「皿か?有るぞ、何に使うんだ?」
荷物の中から旅用の木の皿を出す。
「じゃあ、持ってこっち来て」
ミミはかまわず手招きする。
「しゃあねえな」
チャトーラは皿を持ってミミに続く。
「これを姫さんに」
ミミがアップンゴの山を指差す。
「これはお前達がより分けていた奴じゃんか」
「そうじゃん、姫さんに食べて貰いたくて美味しい奴を選んだじゃん」
ミケラに食べて貰う為に小妖精達は選り分けていたのだ。
「お前ら案外良い奴じゃねぇか」
「ふふふ、今頃気が付いたか」
「あたい達を見直すじゃん」
「四露死苦」
チャトーラは小妖精達が選り分けたアップンゴを皿に盛り、皿を持って戻るとミケラの前に置いた。
「姫さん食べて、熟しているのを選んだから美味しいぞ」
「美味しいじゃん、美味しいじゃん」
「四露死苦」
しかし、ミケラは直ぐに手を出さずに周りを見回す。
「みんなのは?」
「分けて残った分をみんなで食べなよ」
「これは姫様の為にあたい達が分けた奴じゃん。だから姫様に食べて欲しいじゃん」
「四露死苦、四露死苦」
それでもミケラは迷って手を出さない。
「ミケラ様、この方達がせっかくミケラ様の為に用意したモノですから。好意を無駄にしてはいけませんわ」
タマーリンに言われてもミケラはまだ迷うように周りを見回す。
「姫様がいつまでも食べられないから、さっさと残っているのを取って来ようぜ」
チャトーラにハッパを掛けられ、残りのアップンゴをクロ、武茶志、チャトーラで取りに行く。
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