転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その8
「大丈夫ですか?」
頭を抱えて倒れている武茶志をクロが助け起こす。
「小妖精怖い、巨乳のお姉さん怖い・・・小妖精怖い、巨乳のお姉さん怖い」
「しっかりして下さい」
錯乱する武茶志の頬をクロが往復ビンタする。
「あうっ、あうっ・・・はっ」
「正気に戻りましたか」
武茶志はコクコクと頷く。
「でも、あの方達怖いですねぇ」
「ええ、僕も胃に幾つも穴を開けましたから・・・」
クロと武茶志がヒソヒソと話す。
ミミがギロッと睨んで。
「聞こえてるぞ」
「ひぇぇぇぇ」
二人は抱き合って震え上がった。
「武茶志さんはこの世界に転生してきたばかりで、自分の能力もよく判っていないようです」
クロが皆の前で説明する。
「転生・・・って何?」
ミケラがタマーリンに聞く。
「そうですね、死ぬ時に良い事をしたので、猫神様が別の世界に生まれ変わってやり直すチャンスを下さったんですわ」
ミケラは「やり直す?」と首を傾げ、
「やり直すって・・・困ってるって言う事?」
とミケラに聞かれ武茶志は首を縦に振る。
「困っている人は助けて上げなさいってお母さんが言ってたよ、ねっ、ねっ」
ミケラが周りを見る。
「姫様が乗り気なら俺は良いぜ」
「あたしも兄ちゃんに賛成」
「異存は無い」
「ぼ、僕も手伝いますよ」
チャトーラ兄妹、虎次郎、クロは快く了承した。
「妖精さんは?」
ミケラが小妖精達を見上げる。
「困っているというなら助けてやるさ、その代わり後でしっかり働いて貰うからね」
「働いてあたい達に貢ぐじゃん」
「四露死苦」
ミミ達は性悪ではあったが困っている相手を見つけると助けたくなる性分でもあった。
「ありがとう妖精さん」
ミケラが喜んで小妖精に飛びつこうとしたので、小妖精達は一斉に逃げ出す。
「あぶね、姫さんは力の加減がつかないからな」
今までにミケラに飛びつかれ、何度も痛い目に遭っていたのだった。
「ぶーっ」
小妖精達に逃げられ、ミケラは頬を膨らませる。
タマーリンはミケラが言った「お母さん」が生みの親のお妃様で無い事を知っているので、複雑な顔でミケラを見ていた。
「能力を確かめたいのなら運動会というのはどうでしょう?」
タマーリンは自分の感情を悟られないように明るい声で提案する。
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