外伝1「さすらいの勇者1ー44」
「おっ、サビエラ帰ってきた」
広場に戻ると技術者の一人、ジェーンが駆け寄ってきたが、
「おっと、お邪魔だったかな」
と途中で踵を返そうとする。
「ジェーン、なんで引き返すのよ」
サビエラが呼び止める。
「いやだって、人の恋路を邪魔するのも野暮ってモノでしょ」
「恋路って・・・あっ」
そこでようやく、サビエラは自分が無茶士と手を繫いで寄り添って歩いていのに気がついた。
「これはあのその・・・」
顔を真っ赤にしてしどろもどろになるサビエラ。
「いいって、いいって。ほら魔道研てさ浮世離れしたのばかりじゃない、そんな中にいると感化されるって言うか、感覚おかしくなるからさ。恋のチャンスとか逃がさないか心配してたんだ。サビエラ、あんた可愛いいのに奥手だから」
それからジェーンは無茶士の顔をじろじろと見てから、
「割といい男じゃない、奥手のサビエラにしては上出来」
と誉める。
「ちょ、ちょっと止めてよ」
サビエラが慌ててジェーンを無茶士から引き剥がす。
「何すんのよ、別に取ったりしないから」
「そんな問題じゃないでしょ」
サビエラはジェーンと無茶士の間に立ち壁になると、無茶士の方を向き直って、
「スミマセン、スミマセン。ジェーンが・・・わたしの友達が失礼な事をして」
ペコペコと頭を下げる。
「ほらやっぱりわたし、お邪魔虫じゃん」
ジェーンは手をひらひら振って、
「お邪魔虫はさっさと消えるよ」
戻ろうとしたが、一旦立ち止まって無茶士を見る。
「この子の事頼んだよ、わたしの親友泣かしたら許さないからね」
それだけ言うと、今度こそ広場の方へ戻っていく。
「仲が良いんですね」
「はい、魔法道具研究所に入ってから出来た友達なんですけど、昔からの友達みたいな感じです」
サビエラの表情を見て、本当にそうなんだと確信した無茶士。
「あっそうだ」
唐突にジェーンが立ち止まり、振り返った。
「大事な事を言うの忘れていた」
「大事な事?」
サビエラは嫌な予感がした。
「砦のお偉いさんの使いが、魔法投影機の話聞きたいって来てるんだった」
嫌な予感的中。
「それを先に言いなさいよ」
「いやあ、恋路を邪魔をするのは悪いかなと思った瞬間、忘れちゃった」
舌を出すジェーン。
「もう、それはいいから・・・無茶士さん、用事が出来たのでこれで失礼します」
サビエラは無茶士に軽く頭を下げてから、
「ちょっと待ってよ、ジェーン」
ジェーンの後を追った。
「やれやれ、相変わらず忙しい方だ」
無茶士は笑いながゆっくりとサビエラ達の後を追った。
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