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外伝1「さすらいの勇者1ー40」

 暴風は収まり、溶岩の生み出す高熱によって発生する上昇気流に引き寄せられる風とのみとなる。

「このくらいの風なら大丈夫かしら?」

 タマーリンの言葉にシルフィーナは頷いた。

「ありがとう、本当に助かったわ」

「あの風もわたくしの魔法が原因ですもの、その責任くらいは取りますわよ」

 障壁を消すとタマーリンは一息入れて、

「本当に疲れましたわ、大きい魔法で一発ドンとやった方が楽なのに」

 大規模魔法を使えない理由があった。

 魔獣の出てくる洞窟から山を下るには、今通った谷を通るしかないのだ。

 それ故に、谷の出口に砦を築き、砦が魔獣の撃退拠点として機能している。

 迂闊に大規模魔法を使って地形を変えてしまい、下る道が複数出来てしまえばそれだけ守りが難しくなるのだ。

 実際、過去に谷をせき止めた事があったが、溢れ出した魔獣が谷の上部から方々に散って各地に大きな災害をもたらせた事があった。

 それ以来、谷を塞ぐ高位は禁忌と見なされている。




 今もタマーリンが溶岩の海へ変えたのも谷の底の部分だけであり、谷の地形に大きな影響は出ていない。

「本当にありがとう、助かったわ。溶岩が冷えなければ魔獣もこちらに来られないでしょうから、今日一日、部下達を休めさせる事が出来る」

 タマーリンが出動すると聞いて直ぐに他の部隊の出動を止めたのは、タマーリン一人でなんとかなるのは判っていたからだ。

 サポート役としてシルフィーナが付いて来たのも、部下を休ませる為と並の腕ではタマーリンのサポートは務まらないからだった。

「久しぶりに先生の魔法を見られて、わたくしも嬉しかったですわ」

 タマーリンは懐かしそうに笑う。

「先生って、シルフィーナさんてタマーリンさんの先生なんですか」

 キマシが素っ頓狂な声を上げた。

「ええ、わたくしが魔法の手ほどきをして頂いた先生ですわ」

「八歳の時までだけどね」

 幼いタマーリンに魔法の才を見いだしたタマーリンの祖父が、魔法の教師として軍に無理を言って呼び寄せたのがシルフィーナだった。

「小さい時から魔法の才能は凄かったけど、性格もそれ以上に凄かったから、どれだけ泣かされた事か」

 シルフィーナは遠い目をし、

「あら嫌ですわ、子供の頃の話ですから」

 と笑うタマーリン。

「おまけに八歳の時に大騒動を起こしてね」

 と聞いた瞬間に無茶士は耳を両手で塞いだ。

「何だよ無茶士、耳を塞いだりして」

 いきなりなんだよこいつという目で見るギリ。

「聞きたくない、聞きたくない。どうせろくな事してないから聞きたくない」


                      (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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