転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その7
「そうそう武茶志さん、少々宜しいですか」
クロが武茶志の顔をまじまじと見つめる。
「ほほう、最強勇者のタレントですか。かなり希少なタレントですよ」
「判るんですか?」
「僕、神龍ですから」
それからしばらくクロは武茶志の顔を見て、興味深そうな表情をする。
「なるほど、異世界からの転生してこちらにいらしたんですか・・・子猫を助けたので、猫神の計らいで・・・」
「そうなんですよ、いきなり異世界に転生して出たのは草原の真ん中、食べ物も無くなったので探していたら、向こうの林でこの木の実を見つけて助かりました」
武茶志はナップザックの中から先程の木の実を出して見せた。
「あ~っ、アップンゴの実だ!」
「そうじゃん、うちらの縄張りの木にしか実らない実じゃん」
「四露死苦」
途中から姿が見えなくなっていた妖精達が戻ってくるなり、武茶志の手にしている木の実を見て騒ぎ出す。
「これですか?」
武茶志は突然、小妖精達に取り囲まれて驚く。
「そうだよ、姫さんに食べさせようと思って戻ったら荒らされているし」
「犯人はお前じゃん」
「四露死苦、四露死苦、四露死苦」
「あたたたたたた」
小妖精達にポカポカと殴られ、武茶志は頭を抱える。
「これは武茶志さんがいけませんね、その実は妖精の宝石と言われている大変に貴重な木の実なんですよ」
「そ、そうなんですか」
クロの説明に小妖精達が何故怒っているか判った武茶志は、
「ごめんなさい、ごめんなさい。残っている分は全部返します」
謝りながらナップザックに入っていた木の実を全部差し出す。
「こんなに取ってとんでもない奴だ」
「クズじゃん」
「四露死苦!」
小妖精達は差し出された木の実をかき集めると一つ一つ確かめだす。
「小妖精って怖いですね、俺、可愛いくてもっと優しいもんだと思ってました」
武茶志がチャトーラに囁く。
それを聞いて木の実を確かめていた小妖精達がにや~っと笑う。
「聞きまして奥様、あの方、見かけで妄想してそれを押し付けるタイプですわよ」
「まぁ怖いですわね、奥様。きっと、今まで女性に告白しては何度も振られてますわね」
「四露死苦、四露死苦」
「ぐはぁ!」
武茶志は図星を突かれてのけ反る。
「みなさん、いけませんわ。理想ばかり高くて相手にされず、彼女いない歴=年齢の可愛そうな方に本当の事を言ってはいけませんわ」
性悪小妖精が広げた傷口に塩を擦り込み、タマーリンがトドメを刺す。
「トラウマが、トラウマが」
武茶志は頭を抱えて地面を転げ回る。
「ほ~ほっほっほっほっほっ!」
その横でタマーリンが高笑いをし、小妖精達は互いにハイタッチをする
チャトーラはやれやれと肩を竦め、チャトーミはミケラの目と耳を塞いでいた。
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