外伝1「さすらいの勇者1ー34」
無茶士とサビエラは手を繫ぎながらギリとキマシの後に続く。
「サビエラさんの手、ちっちゃくて柔らかい」
握っているサビエラの手の感触を楽しむ無茶士。
一方、サビエラは、
「無茶士さんの手、握ってる。えへへへへ」
ニマニマが止まらない。
「・・・ギリって言ったかしら、あの子に感謝しなくちゃ」
心の中で、無茶士と手を握らせてくれたギリに感謝していた。
「あれが魔術士達の宿舎だよ」
ギリが見えてきた建物を指さす。
建物自体は、武茶士達が使っている宿舎と大差ない。
ただ、入り口の周りに椅子とテーブルがいくつか置かれていて、そのテーブルのひとつでタマーリンがお茶をしていた。
「こんにちは」
タマーリンを目聡く見つけたキマシが、物怖じする事なく声をかける。
「あら、あなたはさっきの」
「早速、来ちゃいました」
ニコニコ話すキマシにタマーリンも微笑みながら、
「そう言う子はわたくしも好きですわ・・・あら~あら、あら、あら」
離れた所に手を繫いだ無茶士とサビエラを見つけて、タマーリンが素っ頓狂な声を上げた。
「手を繫いだりして、少しは進展したんですわね」
嬉しそうに呟くタマーリンに、
「あれ、ギリが手を繫がせたんだよ」
キマシの説明を聞いて、
「ちょっと、無茶士にサビエラ。ここにおいでなさい」
武茶士達を呼びつける。
「な、なんだよ」
あからさまに警戒する無茶士。
「ご用は何でしょう?」
サビエラは少しおどおどした感じでタマーリンの前に立つ。
「手を繫いだりして、少しは進展したみたいですわね」
「こ、これは」
言われて慌てて手を離す二人。
「慌てて手を離さなくてもよろしいんじゃありませんの?」
「いや、あのその」
「・・・・・・」
顔を赤くしてもじもじとする二人。
「本当に初々しくて見ていて楽しいわ」
クスクス笑うたーマーリン。
そこへ、
「緊急、緊急」
兵士が一人飛び込んできた。
「魔獣が魔窟より大量出現と物見より報告有り、魔術師部隊の出動を要請する」
大声で何度もがなりながら走り抜けていく。
一瞬にして周囲に緊張が走る。
「第一部隊、第二部隊、第三部隊集合」
部隊長の声が辺りに響き渡り、魔術師達が集まり始める。
「集まった部隊から乗船せよ」
集まった集団がひとつ、またひとつと格納庫に向かって走って行く。
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