外伝1「さすらいの勇者1ー33」
「あれっ、そうだったっけ?・・・・・・そうだ、そう言った気もする」
本気で忘れていたようだ。
「もう。面白いモノ見つけると、他の事を直ぐ忘れるんだから。子供か!」
「ううっ、ごめんなさい、許してよギリ」
うるうるした目でギリを見上げるキマシ。
「直ぐそうやって誤魔化そうとする・・・はぁぁ、いいわよいつもの事だし」
ギリは諦めたように溜め息をつく。
「えへへ、ギリ大好き」
ギリに抱きつくキマシ、その様子は仲のいい姉妹がじゃれ合っているように見えた。
「無茶士さん達、タマーリン様のところに行かれるんですか?」
「はい、そうです。最も俺はただの付き添いですけど」
「そうですか、わたしもタマーリン様に用事があるんです。宜しかったらご一緒させて頂いても・・・」
最後の方は少し自信がなくなったのか声が小さくなってしまう。
「いいですよ、一緒に行きましょう」
その返事を聞いた途端、サビエラの顔がぱっと明るくなる。
「お熱いですわねキマシさん」
「ホント、こちらまで当てられてしまいわすわねギリさん」
ギリとキマシは井戸端会議のおばちゃんの顔で無茶士とサビエラを見ていた。
無茶士は二人の会話は聞こえていたが無視して、
「二人とも、行こうよ」
ギリとキマシに行こうと促すが、
「あら嫌だ奥様、こういう時は女性の手を取ってエスコートをするのが基本ですのに」
「これだから気が利かないボンクラにはホント困りましたわね奥様」
二人はまだ井戸端会議のおばちゃんモードのままだった。
「お前らいい加減にしろよ、俺はともかくサビエラさんに迷惑かけるんじゃない」
「そうですよ、わたし達そんなんじゃ・・・」
と言いながらチラッと無茶士の方を見て少し頬を染めるサビエラだった。
そして、それを見逃す二人ではない。
「ほほう、いいんですかお嬢さん。そんな事じゃ好きな殿方といつまでも手を繋げませんぜ」
決め顔で語るギリ。
「そうよ、
「わたしちょっと疲れちゃった」
くらい言って、手を取って貰うくらいしないとダメだよ」
キマシの言葉に「うんうん」とギリは頷く。
「ちょっとそれ使おうと思っていたのに、使えなくなったじゃない」
心の中で叫びつつ、サビエラはキマシを睨む。
「あれ?あの子、凄い顔してわたしを睨んでるんだけど、わたしまたやっちゃった?」
ギリに囁くキマシ。
「多分、今の奴を使うつもりでキマシが言っちゃったから使えなくなったんで怒ってるんじゃない」
「あちゃあ」
頭を抱えるキマシ。
「あたしに任せておきな」
ギリが素早くサビエラに近づくと手を取って、
「はい、よろしく」
無茶士に握らせた。
「ちょっと、おい」
慌てる無茶士を他所に、
「行くよキマシ」
「待ってよギリ」
走り出したギリをキマシは慌てて追いかける。
「ほら、二人とも早く」
「早く、早く」
先の方でギリとキマシが立ち止まって手を振る。
「行きましょうか?」
「はい」
二人とも手を離さずにそのまま歩き始めた。
後書きです
武茶士とサビエラの仲が少しだけ進展しましたね。
ギリとキマシがあれだけのことをしないと手も握れないというのは困りものですが(笑)
さて、来週からいよいよタマーリン様が本格的に動き出します。
タマーリン様ファンの皆様、お楽しみに。
ではまた来週(@^^)/~~~
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