外伝1「さすらいの勇者1ー32」
「それより無茶士さんの方こそ、こんな所にどうしたんですか?」
内心では「もしかして私に会いに来てくれたとか?」と思ったりもしたが、それは顔に出さないようにする。
「あの二人が魔法投影機を見たと言うので」
無茶士の後ろでギリとキマシが手を振っていた。
「うう、やっぱり」
ちょっとがっかりしつつも、
「はい、見るだけならかまいませんが作業の邪魔はしないで下さいね」
「は~~い」
元気よく返事をする二人。
「それで、これどんな魔法具なんですか?」
キマシが好奇心を抑えられなくなってサビエラに目をキラキラさせながら聞く。
「こ、これですか・・・これはここの部分に映像が出るんですよ。そうだ、ちょっと待って下さいね」
そう言ってサビエラはパタパタと走って行くと、一つ目ちゃんを抱えて返ってきた。
「この子、一つ目ちゃんて言うんですけど。この子の目で見たモノがそこの投影機に写るんですよ」
一つ目ちゃんをキマシに見せる。
「これで?」
いかにも作り物と判る一つ目コウモリを見せられ、キマシは助けを求めて無茶士やギリの方を見る。
「それ、羽が付いているでしょ。その羽で飛ぶんですよ、鳥みたいに」
「おお」
無茶士の説明に驚きの顔で一つ目ちゃんを見るキマシ。
「つまり、そいつが空を飛んで上から見たモノをそこに映し出すってことかな?」
斥候だけあってギリは冷静に判断する。
「はい、そうです」
サビエラはニコッと笑って答えた。
「てことは、あたしみたいな斥候はお役御免じゃない?」
「それは違いますよ」
サビエラがきっぱりと言う。
「一つ目ちゃんは魔力の消費が激しいので運用が大変なんです。それに広い場所では誰よりも優秀ですけど、入り組んだ路地やここみたいに木が多い場所は飛ばすのにも苦労します。なので、一つ目ちゃんは遠くまで一気に行って見てくるとか、人の足では難しい地形なんかでの運用が主になります」
「それじゃあ、森の中とか、街の中での追跡はまだ大丈夫だね」
サビエラの説明に少しほっとするギリ。
しかし、無茶士は知っていた。
ドローンは元いた世界では方々で活躍をしている事を。
一つ目ちゃんはその先駆けに過ぎない事を。
「それ飛ばせて見せてよ」
キマシがワクワクした顔でサビエラにおねだりする。
「見たい、見たい。あたしも見て見たい」
ギリもそれに便乗してきた。
「済みません、まだ準備が出来ていないので・・・おやつの頃に一度試験飛行をさせる予定なのでその時にまた来て頂ければ」
サビエラが申し訳なさそうに頭を下げた。
「おやつの頃か・・・まだ時間はあるね?」
「それじゃ、先に用事を済ませちゃお」
「用事って・・・何だっけ?」
真面目な顔でギリに聞く来ます。
「あんたがタマーリンて言う人に会いに行きたいって言ったんでしょうが」
怒るギリ。
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