外伝1「さすらいの勇者1ー30」
訓練も終わり、お昼を済ませた後にキマシが、
「わたし魔法部隊見に行ってみたい」
とギリを誘う。
「そういや、さっきのケットシーの美人・・・なんて言ったっけ?」
「確か、タマーリンじゃない、無茶士がそう言ってたよ」
「そうそう、そのタマーリン、キマシに遊びにおいでって言ってたもんね」
「うん、それに魔法も教えてくれるって言ってたし。もっと上手に魔法を使えるように成ったらギリ達の助けに成るかなって」
照れくさそうに笑うキマシ。
「助かるよ、今でも充分キマシの魔法凄いけど、魔獣相手するならいくら強くなってもいいくらいだもんね」
ギリは魔獣との戦闘経験が一度ある、その時に防ぎきれずに魔獣を後ろに通してしまい後衛が犠牲になったのだ。
命こそ無事だったが、重傷を負い治療の為に砦を去って行った。
その補充としてきたのが、キマシとモリノクだ。
ギリがキマシに訓練で厳しいのも、もう二度とあんな思いをしたくないという強い意志からだった。
「そうだ、無茶士も誘おう。知り合いみたいだし」
「でも、なんか凄い嫌そうな顔してたよ無茶士」
「う~~ん」
ギリが腕を組んで考え込む。
「こんな手はどうかな?」
キマシの耳にひそひそと計画を話す。
「ねえ、無茶士。あんたタマーリンて言うケットシーと知り合いでしょ?」
ギリに声をかけられた。
「知り合いと言えば知り合いだけど、それが何か?」
「さっき、そのタマーリンがわたしに魔法部隊の方へ遊びにおいでって言ってたじゃない、ちょっと行ってみようかなって」
キマシが上目遣いで無茶士を見上げてた。
「俺は嫌ですよ、タマーリンに自分から関わりに行くなんて」
無茶士はあからさまに嫌そうな顔で断る。
「え~~っ、いいじゃない付き合ってよ」
キマシが武茶士の手を掴んで来る。
「ちょっと止めて下さいよ、俺は本当にタマーリンが苦手なんですから」
「本当はわたしと行くのが嫌なんだ」
キマシが目をウルウルしだした。
「いや、違うから、本当にタマーリンが苦手で・・・」
「嘘よ、わたしと行くのが嫌だからそんな言い分けしてるんだ・・・わぁぁぁぁぁん」
キマシが顔を手で覆って声を上げて泣き出した。
「わぁ、やめて・・・やめて・・・」
突然の事にオロオロするばかりの無茶士。
「ちょっと無茶士、女の子を泣かせて恥ずかしくないの?」
ギリがキマシを庇うように抱き寄せる。
「ギリィィィ、無茶士が一緒に行ってくれないって、ひっくひっく」
ギリの身体にすがりつきながら泣くキマシ。
「よしよし」
キマシの頭を撫でながら、
「ちょっと無茶士、一緒に行くくらい別にいいじゃない」
「だから俺は・・・」
チラッとキマシの方を見る。
「判った、判りました。行けばいいんでしょ行けば・・・はぁぁぁ」
無茶士は盛大に溜め息をつく。
「ありがと無茶士」
ギリは無茶士に礼を言うと、
「キマシ、顔が涙でぐちゃぐちゃだから向こうで直そう」
「うん」
キマシはギリの身体に顔埋めたまま、建物の影に行く。
「もういいよ、キマシ」
言われてキマシはギリの身体から顔を離す。
顔には泣いた後などない。
「案外チョロかったね」
「ホントにチョロかったね」
どうやら今のは演技だったようだ。
「あいつ、純情すぎんだよ。あれじゃダメだな」
「うん、ダメだよね」
二人は溜め息をつく。
「女が顔を真っ赤にして「違います、違いますから」と言って逃げていったのに、微動だにしなかったあのぼんくらを」
「わたし達でなんとかするぞ」
「お~~~!」
気勢を上げる二人。
後書きです
最近、ギリとキマシのセリフを考えるとき、声付きになってきました。
声が付くというのはそれだけ、自分の中でキャラが馴染んできた証拠です。
因みに声は、
ギリ 東山奈央
キマシ 井口裕香
です。
読む時に、脳内変換して読んでもらえると嬉しいです。
ではまた来週(@^^)/~~~
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