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外伝1「さすらいの勇者1ー29」

 それから攻防は続き、十九手まで決着がつかなかった。

 無茶士はもう疲労困憊で立っているのが精一杯。

「もう何時間も戦っているような気がする」

 実際には10分くらいしか経っていない。

 それだけ虎次郎の攻撃が厳しいのだ。

 中途半端な強化では虎次郎の厳しい攻撃は防ぎきれない。

 そして結界の強度を上げれば、それだけ魔力を注ぎ込まなければならないのだ。

 魔力のコントロールなど縁のなかった無茶士にとって、それだけでも負担なのに虎次郎の攻撃は速くて鋭い。

 気を抜かずに常に結界を強化し続けなければなく、魔力のコントロールする為に意識を割くのも苦しくなってきている。

「もう限界かな?」

 魔力が残り少ないのは感覚的に判る。

 気力の方も途切れそうで結界を強化して保っているのも辛い状態だった。

 これらはタマーリンに実験の相手をさせられて身につけたモノだ。

「これもタマーリンのお陰か・・・」

 毎度、魔力が切れるまで魔法を打ち込み続けられていた事を思うと、無茶士はげんなりしたが。

「虎次郎の攻撃を防げるのもあと一回くらいか・・・」

 無茶士は覚悟を決めてハリセンを握り直す。

「次こそ」

 勝てなくても一矢報いるつもりで虎次郎を睨む、その瞬間、虎次郎が瞬歩で突っ込んでくる。

 虎次郎の腕の動きを見ながらハリセンの軌道を予測して、結界に魔力を込めて部分的に強化する。

 しかし、ハリセンは来なかった。

 そのまま駆け抜ける虎次郎。

「えっ」

 と思いつつ、振り向く無茶士。

 だが振り向いた先には虎次郎の姿はなかった。

 上の方に結界の違和感を感じた。

「上!」

 首を上に向けると大きくハリセンを振りかぶる虎次郎の姿が。

 無茶士に出来たのは結界の上部分を強化する事だけだった。

 ハリセンが振り下ろされ、結界で防いだにも関わらず衝撃が抜けて無茶士の頭を打つ。(二十手)

「ぐわぁぁ」

 頭を抱え込んでその場にへたり込む無茶士。

「勝負あり、虎次郎の勝ち」

 チェンが虎次郎の勝ちを宣言した。



「今ので二十手目だよね?」

 ギリがヒットやチェンに確認する。

「ああ二十手だ」

 チェンが悔しそうに返事をし、

「そうです二十手です、賭けはあなた達の勝ちです」

 ヒットは微笑みながら賭けはギリ達の勝ちだと宣言した。

「勝ち?わたし達勝ったの?」

 半信半疑のキマシ。

「そうだよ、あたし達が勝ったんだよ」

 しばし、ギリの顔を見つめていたキマシが、

「やった、勝ったんだ」

 ギリに抱きつく。

 その様子をみた虎次郎は満足そうな顔をする。

「虎次郎」

 虎次郎に無茶士が声をかけた。

「今のは?」

「瞬歩でお前の横を駆け抜けた後、直ぐに瞬歩で上に跳んだだけだ」

 事もないように答える虎次郎。

 瞬歩自体、無茶士が真似をしようとしても出来ない高度の技なのに、その瞬歩の最中に更に瞬歩で上を跳ぶなんて今の無茶士では思いついても出来る事ではない。

「敵わないな」

 虎次郎の強さを思い知らされ、その虎次郎に手抜き無しで稽古を付けて貰っている自分が少しだけ誇らしく思った。


                     (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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