転生したら最強勇者になったが、住民の方が優秀だった件 その5
(Copyright2022-© 入沙界 南兎)
「ミケラ様、おひとつどうぞ」
タマーリンが袋の中からパンを出してミケラに渡す。
「旦那とクロも食べるよね?」
チャトーミは虎次郎とクロに手渡し、
「お前らも食うだろ?」
チャトーラが小妖精達でも食べやすいようにパンを小さくちぎって渡す。
「美味しい!」
「本当に美味しゅうございます」
ミケラとタマーリンがパンの美味しさに声を上げる。
「このパン、女将さんが自分で焼いているんですよ。毎日ではないのですが、時々おやつにと倉庫の皆に配ってくれんです」
「凄いね兄ちゃん、倉庫って結構人がいるのに」
「そうだよな、街中の商店の品物預かってるからな」
女将の経営する倉庫は街中の商店の商品を預かっていて、ナマ物など傷むモノさえ氷魔法で長期保管してくれるのでかなり重宝されていた。
街中の商店の品物を預かっているからこそ出来ることなのだが、それ故に倉庫で働く作業員の数も多い。
「本当にあの女将はパワフルだよな」
「本当だね兄ちゃん」
女将の作ったパンを食べながら、ミケラ一行は和気あいあいと草原の中を通る道を進む。
それから数時間が経った。
「いないぞ、変な奴」
チャトーラが音を上げ始める。
「姫さんと来れば直ぐに会えると思ったのに」
「会えないじゃん」
「四露死苦・・・」
ミケラは疲れて虎次郎に抱きかかえられ、虎次郎の腕の中でうとうととしていた。
「草原と言っても広いよね」
草原は街の北側から西側に広がっており、季節季節の花を咲かせて旅人達の心を癒やしていてくれていた。
「そうだ、いっそ私の背中に乗って空から探すというのはどうでしょう?」
クロが提案した。
「えっ、クロの背中に・・・どうやって?」
チャトーラがクロの背中をまじまじと見る。
「神龍ですから、皆さんを背中に乗せて飛ぶくらい造作も無いですよ」
と言われ、チャトーラはしばし考えてぽんと手を打つ。
「そういやそうだったな」
完全に忘れ去れていた。
「ひどいです、私の事皆さんなんだと思っているんですか」
クロが叫ぶと、
「姫様につきまとう変質者」
「ぐはぁぁぁ」
「使い潰していい下僕に決まってますわ」
「うがぁぁ」
「でかいトカゲ」
「ぐはぁ!」
「いじり甲斐のあるおもちゃじゃん」
「はぁはぁはぁ・・・み、皆さんひどいです。ぼ、僕のサンチ0ですぅぅぅ・・・」
脂汗を流しながら、クロは胃を押さえる。