外伝1「さすらいの勇者1ー11」
武茶士は虎次郎に分けて貰ったご飯を、あっという間にたいらげてしまった。
元々お米好きの上、恋い焦がれていたのだから仕方ないだろう。
取ってきた料理も食べ終わり、一息ついてから、
「虎次郎、ご飯ありがとうございました。凄く美味しかったです」
テーブルに頭が付く程、頭を下げて虎次郎にお礼を言う。
「そうか美味かったか。明日からお前の分も炊いておこう」
虎次郎がぼそっと呟く。
「いいんですか!ありがとうございます、ありがとうございます」
武茶士はお茶を飲んでいる虎次郎の手を握って感謝する。
「茶が飲めぬ」
虎次郎に追い払われてしまう。
「武茶士、君もお茶を飲んで落ち着きましょう」
ヒットに言われ、武茶士は大人しく席に着くと大人しくお茶を啜った。
「おーし、みんな飯は食い終わったようだな」
チェンがテーブルを見回す。
「それじゃあ、腹ごなしに庭に出ようか」
「うへ、もう訓練」
「もう少しゆっくりお茶したいよね」
ギリとキマシはあからさまに嫌な顔をする。
「お前ら、そうやって直ぐサボる事考えんじゃねぇ!さ、行った、行った」
チェンに追い立てられて、みんな庭へと出る。
「武茶士は初めてだからしばらく見学、ドンは俺とやるか?」
「久しぶりじゃ、手加減せんぞ」
「じゃ、これ使ってくれ」
粗末な剣と盾をドンに渡す。
「なんじゃこのおもちゃは?こんなもんでまともに練習出来るか!」
怒鳴るドンの頭をサンチョががっちりと掴んで、
「旦那様、我が儘を言ってはいけませんよ」
と微笑みながらドンを睨み付ける。
「いででで、判った、判ったから手の力を緩めるのじゃ」
「はい、旦那様は本当に物わかりが良くて助かります」
ドンの頭を掴んでいた手を離すと、微笑みながら武茶士の横に立った。
「あなた達、どんな関係なんですか?」
武茶士が聞く。
「わたしと旦那様は、普通の主従関係ですよ。極々普通の主人と従者に見えるでしょ?」
サンチョは微笑みながら答えるが、その目は「余計な詮索すんじゃねえボケ」と武茶士を眼力で殺しそうな勢いで睨んでいた。
武茶士は「関わるとやばい」と察し、それ以上詮索するのは止める事にする。
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