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外伝1「さすらいの勇者1ー8」

「俺は武茶士、宮本武茶士と言います。見たとおりケットシーでタレントは勇者です」

 勇者と聞いて、

「おおっ」

 と皆の口から漏れる。

「それで武茶士は異世界からの転生者なだそうです」

 ヒットが付け加えて説明する。

「異世界からの転生者って事は・・・?」

「あっ、俺は元人間です。魔法はないけど、ここより文明の進んだ世界で暮らしていました」

「へえ、どんな世界だったの?」

 ギリが興味津々という目で武茶士を見つめた。

「済みません、その事については口止めされているので」

「ちぇっ、つまんないの」

 ギリはつまらなそうに口を尖らせる。

「すみません」

 武茶士は申し訳なさそうに頭を下げた。

 口止めをしたのはモモエルだった。

「いいですか武茶士、あなたの元の世界の話をしたら、それでこちらの世界にどんな影響が出るか判りません。なので、聞かれても人に話してはダメですよ」

 と釘を刺されていたのだ。

「そのくせ自分たちは根掘り葉掘り聞いてくるんだから」

 研究所に呼ばれ質問攻めにされたときのことを思い出し、武茶士は少し顔色が青くなる。「どうしたの?」

 武茶士の顔色が悪くなったのでギリが不思議そうに聞いてきた。

「なんでもないです」

 慌てる武茶士。

 ギリは武茶士の好みというわけではないが、きつめの感じの整った顔をしている。

 そもそも年齢=彼女いない歴の武茶士は女性慣れしていない。

 女性にじっと見つめられるとどう反応していいか判らないのだ。

「ふ~~ん」

 それだけ言うと、ギリはキマシとの会話に戻った。

「勇者のタレントってどんな事が出来るんだ?」

 チェンが興味深げに聞いてくる。

「常時結界が身を守っていてくれています、強い攻撃は意識を集中しないとダメですけど、軽い攻撃なら弾いてくれるので助かっています」

 倉庫で働いていると、たまに上からモノが落ちて来る事がある。

 軽いモノなら難なく弾いてくれるのでケガをしないで済むし、重いモノは弾いてくれないが結界がクッションの役割をしてくれてので大けがにならないで済んでいる。

 タマーリンの言うには、

「無意識に結界を強化出来るようにすれば、かなりの攻撃が防げるようになりますわ」

 と言う事なのだが、やっと結界に意識を向けられるようになったばかりで、無意識に結界に意識を持って行けるようにはまだなっていなかった。

「まだまだ先は長いな」

 自分の未熟さを痛感してしまう武茶士であった。


「それは面白いな、不意打ちは効かないって事だな。それで他には?」

「他には高くジャンプ出来ます、二階や三階くらいなら余裕で屋根までジャンプ出来ますよ・・・他には力強いです、昨日まで倉庫で働いていたですが、お陰で重宝されています」

 はにかむように笑う武茶士。


2023/10/08 誤字修正


(Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

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